●好きだ

5/7
前へ
/565ページ
次へ
「ちょっと、考えさせて」 私の方を見ず、早口で答えた海翔はすくりとベンチから立ち上がった。 「ちょっとって……、どれくらい?」 「2~3日。 それまでに、俺の中で答えを出すよ。 今は自分的に、色々と気持ちの整理がついてなくてさ」 「気持ちの整理?」 遠回しな海翔の物言いに、私は眉を寄せずにはいられない。 「正直言うとさ、俺。 紗由さんと凪さんが付き合うって話を聞いた時、男として勝てないなと思ったんだ。 凪さんはハイスペだしイケメンだし、俺みたいに工場でフォークリフトに乗ってるようなヤツじゃ勝てっこないな、って」 私は「はぁ」と生返事をし、海翔の次の句を待つ。 「でも、凪さんと別れて湊翔と付き合いだした、っていうのなら話は別だよ。 アイツは基本身勝手だし、女を泣かす事に関して何とも思っちゃいない。 紗由さんが何考えてんのか知らないけど、まだ湊翔と付き合い続けるっていうのなら、俺も自分の気持ちに正直になろうかなって思って。 変に別の人を好きになる事で、自分の気持ちをごまかすんじゃなくてさ」 「ちょっと、海翔……」 周囲の目も(はばか)らず、熱く語りだした海翔の次の言葉が予想出来た私は、彼を制止せずにはいられない。
/565ページ

最初のコメントを投稿しよう!

311人が本棚に入れています
本棚に追加