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「ちょっと、考えさせて」
私の方を見ず、早口で答えた海翔はすくりとベンチから立ち上がった。
「ちょっとって……、どれくらい?」
「2~3日。
それまでに、俺の中で答えを出すよ。
今は自分的に、色々と気持ちの整理がついてなくてさ」
「気持ちの整理?」
遠回しな海翔の物言いに、私は眉を寄せずにはいられない。
「正直言うとさ、俺。
紗由さんと凪さんが付き合うって話を聞いた時、男として勝てないなと思ったんだ。
凪さんはハイスペだしイケメンだし、俺みたいに工場でフォークリフトに乗ってるようなヤツじゃ勝てっこないな、って」
私は「はぁ」と生返事をし、海翔の次の句を待つ。
「でも、凪さんと別れて湊翔と付き合いだした、っていうのなら話は別だよ。
アイツは基本身勝手だし、女を泣かす事に関して何とも思っちゃいない。
紗由さんが何考えてんのか知らないけど、まだ湊翔と付き合い続けるっていうのなら、俺も自分の気持ちに正直になろうかなって思って。
変に別の人を好きになる事で、自分の気持ちをごまかすんじゃなくてさ」
「ちょっと、海翔……」
周囲の目も憚らず、熱く語りだした海翔の次の言葉が予想出来た私は、彼を制止せずにはいられない。
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