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そうなった時、ガブリエラはどうなるのか……。
騎士は皇帝の忠実な僕だ。
叙勲の時は別の王族が行ったので、直接皇帝には会ったこともなければ、まともに顔を見たこともない。
それでも、熱く燃え滾る忠誠心を持ち、今まで皇帝のために命を捧げる覚悟で生きてきた。
それは生まれて初めて自分が必要とされた場所であると感じていたからだった。
それは一生変わらず、このまま自分の胸の中で燃え続けて、消えることがないと思って生きてきた。
今でも、それはそのまま変わらない気持ちであることは間違いないが、胸が騒いで締め付けられるように苦しいのだ。
騎士はこの苦しさは恐怖からくるものではないかと考えた。
恐怖を感じたら、その原因を考えて、徹底的に消し去ること。
今まで学んできた騎士道の精神から、必死に頭を働かせたが、恐怖の正体は雲のように掴めず、胸騒ぎはいつまで経っても治らなかった。
夢を見ていた。
もしかしたら籠の中の鳥であっても、このままいつか扉が開かれて青空に飛んで行ける日がくるのではないかと……。
ガブリエラは自分の運命に、身を切り裂かれるような気持ちになって両腕を抱いて震えた。
「アン、それは……間違いないの?」
「ええ……、洗濯場でメイド達が話しているのを聞きました。使用人までとなると、みんな知っている話だと思います」
「そう……ついに……来てしまったのね」
フォンタニアから一緒に付いてきたのは、アンという名前の、もともとガブリエラの侍女をしていた者で、帝国に入ってからもずっと身の回りの世話をしてくれた。
ガブリエラにとって、今まで一緒になって苦楽を共にした友人のような存在で、アンには心を許してなんでも話していた。
「まっ……まだ、分かりません! 戦争は始まっていませんし、フォンタニアが動くなんて……そんなこと!」
「そうね、まだ……分からないわね」
半泣きになっているアンに向かって、ガブリエラは安心させるように微笑んだ。
口ではそう言いながらも、ガブリエラには近い未来が手に取るように分かっていた。
野心家の父親がこの機会を逃すはずがない。
ミタニアを焚きつけて、戦いの火を上げようとするはずだ。
勢いに乗じて、自国の存在感を出して、ゆくゆくは帝国の領土を手に入れようと目論んでいる可能性がある。
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