7人が本棚に入れています
本棚に追加
/132ページ
化け物は突如道ばたに現れた。
ただ、それはおかしい。
そこは毎日俺が通っている通学路で、いつもなら俺みたいな帰宅途中の高校生とか郵便配達のバイクとか買い物帰りのカートひいたおばあちゃんとかがぽつぽつ歩いているような道なのに、そのときは俺しかいなかったから。
だから夢だ、とは断言できる。
どこからが夢かはわからないけど、とにかく急に化け物はいた。
歩いていたら不意に視界が暗くなった。
ゲリラ豪雨の寸前、みたいな。
こんな急に雲って出る?と空を見上げた俺は、そこに広がる光景に目を瞠ったのだ。
何かがいた。
例えるなら大阪にある太陽の塔みたいな大きさと形のものが突然いて、太陽の光をまるごと遮っている感じ。
大阪に行ったことないから実物は知らないけど。
逆光で真っ黒になったそれは左右にばいんばいん揺れていた。
そのばいんばいんの合間に、なにかもうひとつ影が飛んでいる。
影はヒナに餌を与える親鳥みたいな動きで、謎の物体に近づいては離れるを繰り返している。
その親鳥がそいつだった。
「なんで?」
そいつが言った。
俺が覚えているのはそこまでだ。
最初のコメントを投稿しよう!