戦う！タックスティクス

怪人

　まだ１２月になったばかりだというのにこの町にはめったにないほどの大雪が降ったある日、俺はひとつの動画を上げた。

　「ケチャップ１本で雪ウサギに魂を吹き込もう」というその動画は、なんでかバズッた。
　えんえんと雪ウサギを作り、本来なら南天とかの赤い木の実で目をつくる部分をケチャップで代用するというもので、近所の公園中に並べたウサギの間を縫って赤目を描く俺はいつしか作業に夢中になっていた。

　大量のウサギが可愛かったせいなのか、大雪が珍しかったからなのか、その動画は爆発的に人気が出た。
　途中で飽きたので雪ウサギ作りをダルマ作りに変更し、ダルマとは雪ダルマじゃなくていわゆる縁起物の丸っこいあれで、ケチャップはダルマの赤い部分に塗りたくるというグダグダな感じで終わったにも関わらず、その日以来、俺はそれなりの数のフォロワーを手に入れた。

　そうなると欲がでてくる。
　次に上げたのは「ケチャップお詫び行脚の旅」というものだ。

　前回の動画に「食べ物を粗末にするな」という批判があって、それは確かにと思ったからだ。

　手始めにケチャップの袋の裏に書いてあったメーカーにお詫びの電話をし、生産工場を聞いた。次に工場に連絡したら直接お邪魔してお詫びさせてもらえた。
　それどころか工場見学もさせてもらえることになった。

　この工場見学の撮影をＯＫしてもらえたのは大きかったと思う。
　規格外のトマトが徐々になめらかなケチャップになっていく様は普通に見ごたえがあったので視聴者も楽しかったに違いない。

　最後はトマト農家さんのもとに行きお詫びをする、という変なわらしべ長者みたいな要領のこの動画もまたたくまに人気が出た。

　これに関してはいきなり電話かけてきた非常識な中学生にこころよく胸を貸してくれたケチャップ側の皆さんに本当に感謝している。
　実際「素直なキッズかわいい」みたいな応援コメントもいっぱいついたし。

　一度注目を浴びてしまえば、あとはそう難しくなかった。
　アイディアがなければ普通に好きなゲームの実況をしてるだけでも見てくれる人はいたし。

　そういうのでつないで、コンスタントに「でんぐり返しできるかな＠高飛び込み台」みたいなネタ動画を上げる。
　ともあれ、そんな感じで高１となった今、俺は人気とは言えないけど、少しは見られている動画配信者となった。