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MANOからダイレクトメールが来たのもたぶんそういう細々とした拡散があいつの元までたどりついたということだろう。
高飛び込み台動画をアップしてしばらくした後のことだ。
はじめまして!
動画拝見しました
おもしろいですね!
MANOからもらった最初のメールは確かそんな感じの文だった。
ちなみに高飛び込み台の動画は市民プールの高飛び込み台の上から前転を繰り返してそのまま水の中に落ちるっていう秒で終わるやつ。
当然のように係員さんに激怒されて危うく出禁になりかけたけど、おかげさまで結構たくさんの人に見てもらえた。
これ、S市のプールじゃないですか?
子どものとき行ったことある
意外と俺たち近くに住んでたりして
MANOはそうも送ってきた。
たしかにS市の市民プールだ。
調べてみると温水プールで高飛び込み台があるところはそんなになくて、見る人が見ればどこで撮ったのかすぐわかってしまうのかもしれない。
S市からうちまでは電車で30分しないくらいで、俺も子どもの頃に行ったことがあったから何の気なしに選んでしまったけど。
MANOのSNSを見てみると同い年くらいの男だった。
背も高いし、カッコイイんだけど、顔は女の子みたいにキレイ。
服が好きで、毎日自分のコーディネート写真をアップしている。
俺はファッションに興味ないから知らなかったけど俺なんかよりも全然有名人だった。
こんなオシャレボーイと何話せばいいんだよ、と思いつつ、あたりさわりのない返事を返すと即レスがきた。
有名人のわりに暇なのか、俺が返すとMANOはすぐ返事をくれる。
MANOは予想通り、俺と同い年だった。
タメだからって耳にピアス開けてて、古着が好きで、自ら望んで柄シャツを着るような男と自分が仲良くなれるものなのかと思ったが、意外にもやりとりは数日にわたって続き、MANOと俺はなんか小慣れた。ていうか、俺はちょっとMANOが好きにもなっていた。
MANO、俺のこと褒めてくれるし。
オシャレなのに気取ってないし。
だから実際に会おうと言われたときも全然抵抗はなかった。
普通に学校の友達とかと会う感じ。何ならまだ入学したばっかの高校の友達よりもMANOとの方が気負わず会えるような気さえしながら、俺は待ち合わせ場所に向かった。
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