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「怪人くんも先になんか買って来たら?」
軽く会釈して座ろうとする俺にMANOが言う。
声もいい。俺なんてつい最近声変わりしたばかりだというのに、MANOの声は落ち着いた深みがあり、耳をなでるみたい響く。
カッコイイ奴ってなんでそう全部がカッコイイんだろうな、と思いつつ、「ああ、そだね」と俺はぎくしゃくカウンターに向かう。
MANOはカフェモカを飲んでいた。
だから俺も安心してアイスハニーカフェオレを頼む。
飲めないわけじゃないけど、ブラックコーヒーはあんまり美味しいと思えないから。
MANOみたいなやつはブラックでキメてるんじゃないかと思ったけど、カフェモカでまじ助かった。せっかく「ッス」ってスカした挨拶で決めたのに、ここにきて「ブラック飲めない奴ダサい」って思われたら最悪だし。
それくらい生のMANOやばい。
画像の時点でそれを見抜いている何万人というMANOのフォロワーもすごい。
確かにカッコイイやつだけど、普通に気が合いそうとか思ってた俺と全然違う。
実際に会ってみたらこいつと俺、住む世界が違いすぎるじゃん。
でも速攻で帰ろうかなという気持ちも、カフェモカのおかげでやっぱもうちょっといようかな、と思える。
初対面でカフェモカを選ぶあいつのおちゃめが俺は嫌いじゃない。
あんなにスタイリッシュなのにカッコつけていない証拠だ。
高校生にもなれば第一印象はブラックコーヒーでキメてカッコつけるやつが往々にして出てくるけど、そういうやつらは仲良くなった後に平気でファンタとかにシフトチェンジしたりする。
あれはダサい。
反対に最初から甘いものを堂々と飲める男にこそ信頼できるカッコよさがある。
MANOは後者だ。着飾るのが好きだけど、心は飾らないカッコイイ男。
やっぱりあいつとは仲良くなれそうな気がする。
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