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「あの、いいの?結構ずっと鳴ってるけど」
「う~ん、そうだねえ」
いいかげん気になった俺が聞くと、突然、希が天井を見あげた。
そのまま、ぱんっと音を立てて片手で目を覆う。
なんか急に、芝居がかったポーズしはじめた、と戸惑う俺をよそに、希は笑ってる。
「フフッ」とか言って。
なにそれ怖い。
急にひとりで目を覆って笑うイケメン怖い。
ひそかに怯えていると、また希のスマホが鳴った。
どういう心境の変化なのか、今度はすぐ電話に出る。
「はい、すいませんでした。すぐに向かいます」
それだけ言って希が立ち上がる。
なんなんだろうと思っていると「快も」と腕を引っ張られた。
不意をつかれて不格好に立ち上がった俺を、希はそのまま出口へと俺を引っ張っていこうとする。
「え?ちょっと」
俺が慌てて足を踏ん張ると、希が不思議そうな顔で振り返った。
俺は動揺する。
希がすごくきれいな目できょとんとしていたのだ。「なんで来ないの?」みたいな。
あまりにきれいすぎて自分の方がおかしいのかと一瞬思うが、絶対そんなはずはない。
どうしてそんな顔できるのか俺の方が不思議だ。
希はいいやつっぽいけど、電話に全然出なかったり、かと思えば変なポーズした後は急に普通に電話出たり、さっきの感じを見る限り、理由もなしにノコノコついていくのは怖すぎる。
「一緒に来てよ」
「来てってどこによ?」
頑として動かない俺に希が肩をすくめた。
「いいから」
「いや、よくないわ。怪しいじゃん、お前」
そう言うと希が「たしかに」と苦笑する。
こういう反応を見ると、やっぱりこいつとは仲良くなれそうだよな、と思う。
フィーリングが合うというか、怪しいって言われて、怒ったり焦ったりするんじゃなくて「たしかに」って笑ってくれるのは俺的に安心する。
でもダメだ。安心したところで何も知らないこいつに言われるまま一緒に行くのは危険すぎる。
「ごめんね。実際、俺もこれが良いのかどうかよくわかんないんだけど。でも絶対、快のためにはなるから」
「余計怖いよ。なんなの?マルチ?」
「違えし」
希がおかしそうに笑う。
希がすごく笑うので俺もちょっと面白くなってきちゃうけど、我慢して憮然とした顔でいる。ここで流されてはダメだ。
「でもさ、」
「でも?」
「夢の続き、見てみたくない?」
「え?」
呆気にとられた俺に、希はにやりと笑う。
そのまま俺の耳元に口を寄せ、「行こう」と怪しくささやいた。
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