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プロローグ
公立尾谷高等学校一年生の僕、愛子三福は校舎の壁にもたれて胡座を汲んで座っていた。見上げたら、深い海のような青空にふんわりと真っ白が薄くかかっている。それでも日陰の外は日差しが反射して眩しかった。
いつもと同じ場所で同じ時間に呑気に芋けんぴをボリボリと齧っている。
休み時間は大抵はここにいて過ごしている。
寝てるか食べてるかどちらかだ。
(ん……今日も綿飴が流れてる……)
のんびりとぼーっと空を眺めていたら、地上がわーわーと騒がしくて何となくそちらに視線を向けた。向こうでその一人の男子生徒がびくびくと震えながら、言い合っている男子生徒の二人の顔を交互に見ていた。その二人はカツアゲがどうだかで揉めている。
言い合っている一人は見覚えがあった。身長が結構高い男らしい風貌の人。その人は学校行事や朝の集会で体育館のステージに立っていたのは覚えている……と思う。その時は朝が頗る弱い僕は半分夢の中で話が頭に入っていなかったけど、その人は三年の生徒会長の……若……先輩。確かそんな漢字が付く苗字だった。他はまるっきり記憶にない。
「カツアゲなんざしてねぇよ! そいつに金借りよっかなーって思っただけだぜ」
「嫌がってる相手に脅して借りようってのはどう考えてもカツアゲだろうがよ。返す気ねぇじゃねーか!」
「チッ……うるせぇ奴だなぁ」
不良っぽいカツアゲ男が舌打ちをして生徒会長に睨み付けた。正論を言われて相当苛ついているようだ。
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