掘り返し業者とおまわりさん

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掘り返し業者とおまわりさん

青い空。 雲一つない晴天。 朝晩冷え込むようになったけど、まだまだ日中は残暑厳しい九月。 時刻は朝の十時。 何の変哲もない築五十年、平屋の日本家屋である我が家。 わたしの目の前には、車が三台くらい駐車できそうな少し広い庭。 ちょっとした高台であるため、庭からの景色は最高。 そんな景色を堪能できる開放感抜群の、一メートル程のスチールフェンス。 背丈が高くならない品種の庭木が数本、気持ち程度植えられている。 そんな庭には、深さ数センチの穴がみっつ……よっつ……いつつ……むっつ……。 今も我が家の掘り返し業者……庭で放し飼いしている柴犬のイチローが、ななつ目の穴をせっせこ掘り返していた。 「…はぁ…。」 誰がその穴を埋め立てると思ってるの? ……犬の本能。 ……仕方ない。 ……仕方ないけど…… 「イチロー!」 怒っているわけじゃないけど、少し強い口調で作業中の掘り返し業者に声をかけた。 赤い首輪。 もふもふした茶色い毛。 くるりと巻いた尻尾。 無防備なお尻。 ……くそぅ。 この掘り返し業者は、後ろ姿だけでも可愛い。 「わふっ!」 作業を中断し、こちらに視線をむけたイチロー。 まろ眉が特徴的な愛らしい顔で、キラキラした目を向けてくる。 ……くそぅ。 顔を見ると可愛すぎて、庭を穴だらけにしたことを咎める気も失せてしまう。 そんな時…… 「あの、呼びましたか?」 塀……スチールフェンスの向こう側から、少し低めの男の人の声がした。 「へっ?」 そちらへ目をやると…… 不思議そうな顔をした大きなおまわりさん。 百八十センチはあるかな? 背も高い上に、身体つきもがっしりしてて…… ……あれよ。 くまさんみたい。 チラッと見た顔は、精悍で優しそうな顔をしてる。 大きい人だけど、優しいそうな顔のせいか、不思議と威圧感は感じない。 さっぱりとした短髪と、被っているおまわりさんの帽子がよく似合っている。
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