第2話 初めてのデート、初めてのスキャンダル

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第2話 初めてのデート、初めてのスキャンダル

俺は今、前世と覚醒してまだ4日目の現世を合わせて考えても一番緊張していた。 それは、男なら誰でも緊張するであろう、初デートの直前なのだ。 もし相手に恋の意識がなくても、女友達の1人も連れて来なければもうそれはデート認定でいいだろう。 「京祐くん!おまたせ!」 お、来たか? か...、可愛い。午前中の制服姿も可愛かったけど、私服もむっちゃ可愛い。 ショートパンツが地味な灰色になってるのは上を目立たせる為だろうか?...いや、それは考えすぎか? 「京祐くん、どうしたの?」 「え?あぁ、いや、別に、何も?」 「なるほどね。京祐くん、そういうことはちゃんと口で言った方がいいよ?」 「え?い、一体何の話だ?」 「いや、私の顔に何か付いてるんでしょ?」 「え?」 もしかして、冠那ちゃんって、いわゆる天然? 「いや、その、顔に何か付いてるとかそういう訳じゃないんだけど…。」 「ほら、町案内してほしいんでしょ?行くよ。」 あれ?いつの間にかこっちがお願いした扱いに?まぁいっか。 「京祐くんの家って、確か矢崎の方にあるんだっけ?」 「じゃあ、冠那の家は本町の方なのか?」 「うん、本町の方って言っても、南町の団地の方だけどね。」 「もしかして、本町中学校って、南町も範囲のか?」 「うん。本町は比較的狭い方だから、本町、南町、矢崎、分倍町、分梅町の5つの町に住む中学生が通うんだよ。」 「そうか。」 「まず競馬場に行こう。」 「え?競馬場?」 「あ、中に入るとかそういう訳じゃないけど、あのあたりに一緒に行きたい場所があるから…。」 え?まだ知り合って1日だよね⁉まさか、本当にこれはデート? 「ここの瀧神社んなんだけど、私のお気に入りの場所で、騎手さんたちのサインがあるんだよ。」 「そ、そうか。それより、ここ階段が長いな。」 「まぁそれが運動になるんだけどね。」 「え?ここ武豊のサインもあるじゃん。名前だけ知ってて誰かあんまり知らないけど、有名人?」 「強い競馬の騎手だよ。」 「そうか。俺、あんまり競馬に興味ないんだよなぁ。」 「なら、競馬のことが知りたくなったらいつでも教えてあげるね。」 もしかして、冠那ちゃんってっ競馬に詳しかったりするのかな? 「と、とりあえず次行こう。ほら、何かショッピングモールとかないの?」 「あるにはあるよ。」 「なら教えてくれ。」 「いいけど、条件はあるよ。」 「何でも聞きますから…。」 「ほら、これも持って。」 「はい…。」 俺は今、13歳でガールフレンドの荷物持ちをやっているのだ。この歳で彼女の荷物持ちをした男は世界で俺だけだろう。 「買い過ぎちゃったかな。ショッピングに来たのも久しぶりだったし。」 「いいよ。俺は全然負担じゃないし、むしろ冠那のあれこれ試着してる姿が見れて俺は嬉しいよ。」 「え?もしかして…」 「もしかして?」 「ファッションに興味あるの?」 「え?」 相変わらず鈍感?…いや、天然だな。 「ファッションに興味あるなら、私の家に来る?どうせその荷物家に置きに行きたいし。」 「え?ちょ、それは…。」 そんなこと、まだ思春期(心理的にも)の俺には刺激が強すぎる。 「ねぇ、勝手に友達家に連れ込んで怒られたりしない?」 「そんなことはない…はずだよ。」 結局、荷物持ちとしてついてきてしまった…。 「ほら、上がって。」 「おじゃまします。」 「えっと…、荷物ってどこに置けばいい?」 「ああ、それは私の部屋に置きに行こう。」 「ここが、冠那の部屋?」 「そうだけど、どうかした?」 「冠那って、ファッションデザイナー目指してたりするの?」 「いや、そういうわけでもないけど、アイドル目指してる友達がいて、少しライブ衣装に興味があって模写したり自分で考えてみたりしてるだけで...」 「俺はいいと思うよ、そういうの。なんていうか、いきなりこんなっこと言うのもおかしいかもだけど、冠那に似合った仕事だと思う。」 「ありがとう。そんなこと言ってくれたの、京祐くんが初めてだから嬉しい。」 え?俺が言ったから?いや、考えすぎだ、考えすぎだ。 「そ、それはともかく、クローゼットにもこんなに服あるのに今日もたくさん買ってたけど、どうするの?」 「実は、友達にアイドル目指してる子だけじゃなくてヲタク気味の子もいて、アイドルとかコスプレの衣装は私が一番作るの得意だから作ってるの。そこの押し入れに入ってるけど、見る?」 「ただ見るだけじゃ面白くないから、着てほいいんだけど…。あ、もちろん恥ずかしいなら無理にはいいけど…」 「いいよ。だって、買い物に付き合ってくれたから。」 あれ、最初買い物に行く理由って、俺の町案内の序でじゃなかったか? 「ま、まずはメイド服着てみたんだけど、どう?」 「そ、率直に言っていい?」 「い、いいけど…」 「可愛い。それに似合ってる。」 「え?そ、そんな急に可愛いとか言われると恥ずかしいよ。」 「ごめん。それじゃあ、次、お願いしていい?」 「う、うん。」 「えっと、これは最近のポップアイドルの衣装をイメージして作ったんだけど…。」 「ぶっちゃけ知り合って1日でこんな可愛い姿が見れるなんて俺は一体どこまで幸せ者なんだ…?」 「うぅ…、やっぱり恥ずかしいからやめる!」 「えぇ、何で?もっと見たいんだけど…。ごめん、褒めすぎたのが悪かったから…」 「そ、そいうい問題じゃなくて、やっぱり可愛い、って言ってもらえるなら、自信作で可愛いって言ってほしいから。」 顔赤らめてもじもじしながら本音言う冠那たんマジ神。 「ただいまぁ~。冠那ー、友達来てるの?」 「やばっ!お母さん帰ってきちゃった。どうしよう。」 「こういう時は落ち着いて行動しよう。」 「落ち着いてられないよ。」 「冠那。さっきからバタバタしてどうした…。部屋に男の子?アイドルのコスプレ?まぁ。遂に娘に春が…。」 「お母さん、誤解しないでよぉ。」 「どうも、冠那のお母さん。俺、今日友達になった音辻京祐です。」 「あら、礼儀正しい子じゃない。ところで、冠那と何してたの?」 「冠那の自作の衣装を着てもらってました。」 「そうかい。これでも私の自慢の一人娘だけど、どう思う?」 「とても可愛らしい娘さんですね。」 「京祐くん、もしかして、私のこと好きなの?」 「うん。あのぶつかっちゃった時、覚えてるよね?実は、あの時から…」 「そっか。実は私も好きみたい、京祐くんのこと。」 「もう、アツアツすぎてお母さん見てられないわ。」 「お、お母さん、余計恥ずかしくなるからそんなこと言わないでよ。」 「本当に今日は町案内ありがとう。」 「私も楽しかったよ。また明日。」 「うん、また明日。」 こうして俺は帰路についたが…。 「ちょっとリオス君、他の女の匂いがしますよ?」 「別によくないですか?悠美さん、俺の中身は中学生じゃないんですから。」 「中身が中学生じゃないからですよ。もし相手の子にいやらしい事をしたなんてなったら…。」 「そんなことは流石にしないよ。」 ~翌日、学校にて~ 「おい紅璃(あかり)、昨日な、音辻が冠那ン()入ってくの見たぜ、俺。」 「羚力(れいか)が私にわざわざ言うってことはウソね?」 「いや、ホントなんだって、それが。」 「え?なになに?冠那ちゃんがどうしたの?」 「なんだ、摩耶香か。あのな、昨日、音辻が冠那ん家に入ってったんだ。」 「何それ!その時の様子は?」 「何か、音辻がいっぱい荷物持ってた。」 「デート?冠那ちゃん、オトナだね。」 「そうやってお前はすぐ何でも大人と結び付けようとする…。」 「なあ冠那、どうやら俺たちはスキャンダルに遭っているらしい。」 「それがどうしたの?」 「え?」 「別に、周りにどう言われたり後ろ指をさされたりしても、私たちは私たちの過ごし方をすればいいよ。別に悪い事してるわけじゃないし。」 「そ、そうか。」 「なんなら、噂だとウソも混ざってくるから、いっそのこと噂じゃなくすればいいんだよ。」 ぶっちゃけなんだかとっても危ないことを口走っているようにも思える彼女の顔はとても自信に満ちた目をして笑っていた。 ああ、尊い。可愛い。一生をかけてでも、守りたい、この笑顔。 続く >>Next 第3話 守りたい、この笑顔、この生活。
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