第3話 守りたい、この笑顔、この生活

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第3話 守りたい、この笑顔、この生活

※(適)と「」の前に書いてある場合はモブ「でもなく、ちゃんと名前があるキャラを適当にあてはめてお楽しみください。 「なぁ、お前冠那と何があったんだ?」 「えっと…、君は?」 「わ、忘れたのかよ…。俺は景竜人(けいたつひと)だよ。覚えてくれ。」 「で、何か用なのか?茶化しならごめんだよ。」 「いや、そうじゃないんだ。」 「じゃあ何だ?」 「実は、俺の友達の八王子優佑(はちおじゆうすけ)は、小学生の時から冠那のことが好きなんだ。」 「そんなことを言われても…。」 「大丈夫。冠那は優佑の顔がわかるはずだから。」 「そ、そうか。」 「…っていう話なんだけど。」 「そっか。そういえば、そういうことに関してまだ言ってなかったね。」 「え?」 「京祐くんが一番に堂々と告白してくれたから私は京祐くんを選んだけど、結構小学生の時から私を狙ってる男子はいっぱいいるよ。」 「え?それって、俺が恨まれるの?」 「まあ、そういうことだね。」 「マジか…。」 「冠那ちゃん!」 「うわさっそく来たよ面倒な奴。」 「面倒な奴とは失礼な。俺が先に冠那ちゃんに目をつけてたんだぞ。」 「そんなこと言われても、俺だぞ。先に告白したの。」 「こ、告白…。か、冠那ちゃん、俺、君のことが好きでした…。」 「沖野くん、前に言ったよね?その時になって言っても知らない、って。」 「くそぉぉぉぉぉ!何で、何でこんなぽっと出の男に…」 「京祐くんは、私に運命を感じさせてくれたの。それに、出会って初日で告白できる度胸を持った人なんて、そんなにいないよ。だから、私は京祐くんがいいの。」 「そん、な…。なら!ならせめて、今年は陸上部に入ってまた小学校の陸上部の時みたく部のアイドルでいてくれないか?」 「ほんと諦め悪いよね。京祐くんはどの部活に入るつもりなの?」 「え?俺は亮くん達に誘われてるから軽音部行くつもりなんだけど。」 「なら私も軽音部行く。」 「え~?そこをなんとか…」 「部活くらい好きなところ入らせてよね。私のことが好きなら。」 「わ、分かった。今回は諦める。でも、俺は次の彼氏候補に絶対なってやるからな!」 「まさか、俺らのスキャンダルがごく普通の生活を奪うとか、そんなことないよな?」 「大丈夫だよ。だって、京祐くんと一緒だから。」 本当、俺はこんな子が彼女になってくれて幸せ者だよ。ああ、幸せな日々を壊されるわけにはいかない。 そして俺は心に深く決めた。この生活を守り抜く、と。 「皆さん、今日は短縮下校です。な…」 「ヒャッホー!やったぜ!」 「ちょっと鋼兵、まだ先生が話してるじゃない!」 「どうした紅璃?いいじゃん、少しくらい喜んだって。」 「アンタの場合、うるさいのよ!」 「鋼兵さん、紅璃さん。2人とも落ち着いて。鋼兵さんも少し元気すぎたかもしれませんが、紅璃さんも注意の仕方を考えましょう。」 「でも先生、鋼兵は毎日静かにするべき時に注意されてそれでもこんなに騒いで…」 「分かりました。鋼兵さんについては私から話をしておくので大丈夫です。」 「は?ふざけんなよ。帰るの遅くなんのかよ。」 「鋼兵さん、あなたは思ったことをすぐ口にしすぎです。もう少し考えて発言しましょう。」 「あーはい。」 ~給食にて~ 「ゼリー1個余ったぞ。欲しいやつはいるか?」 (適)「うわ、安藤と給食じゃんけんなんて負ける気しかしないしやめるか…」 「よし安藤、俺と勝負だ。」 「臨むところだ。」 「「最初はグー、じゃんけんぽん。」」 「また私の勝ちか。」 「おい、今安藤後出ししたよな?」 (適)「そんなことを言われてもな…。」 (適)「見てたわけじゃないし。」 「ウチは見たで!」 「あ?それって何を?」 「駒芦恵(くろえ)は確かに後出しはしとらんかった。」 「愛交(あいか)…。いや、いい。譲ろう、そんなに欲しいなら。」 「別にそんな無理やりはいらねぇよ、玉本だってお前の無実を弁明してんだから。」 「お前が私が後出ししたなどと騒ぎ立てなければ愛交だって弁明はする必要はなかったぞ、伊藤。」 「うっせぇ。今回は下がってやるよ。」 ~昼休み~ 「なんか今のクラスに慣れたからしゃしゃり出て来たんだろうけど、あの鋼兵ってヤツ、とんだトラブルメーカーだな。」 「京祐くん、そういうことはあんまり口に出さない方がいいよ。」 「そりゃ口に出さない方がいいのは分かってるけど、何かアイツには腹の虫がおさまらないんだよな。」 「まあ、お互い気をつけよう。」 ~帰る時~ 「お前らって何でもうそんなに仲いいんだよ。なぁ、教えろよ。」 「…。」 「何だ、無視か?おい、無視すんなよ。」 「ちょっと、京祐くんが嫌がってるよ。」 「あ?紅璃といい帝威といい、何で俺ばっか注意すんだよ。いじめはよくないって、小学校で習わなかったか?」 「私も紅璃ちゃんも鋼兵が注意されるようなことしてるから注意してるだけで…」 「ふっざけんな。もういい、覚えてろよ。」 「覚えてろとか言われたけど、逆切れで仕返しされるのかよ。」 「まあ、そんなことになっても京祐くんがいれば問題ないね。」 「あ、ああ、きっとな。」 正直、アイツが俺や冠那ちゃんに何かしたら手出す気しかしねぇ。あんまり関わりたくないし、周りから俺まで問題児だと思われない為にも避けたい。 ~翌日の朝、登校してすぐ~ (適)「グループメッセージで冠那が鋼兵いじめたみたいな事書いてあったけど、どうせ鋼兵のことだから嘘だろ。」 (適)「もう鋼兵の言うことを信じられる気がしないよ。」 「おい帝威、どうやって全員丸め込んだ?」 「え?私がみんなを丸め込んだ?何の話?」 「ごまかしても無駄だぞ。俺の書き込んだことを誰も信じてねぇぞ。何かしてんだろ?」 「別に何もしてないし、証拠のない、よりによって鋼兵から出た話なんて誰も信じないよ。」 「は?どこに俺の話が嘘だって証拠があるんだよ。」 「証拠があるないの話じゃなくて信用の問題だよ。みんなの信用がないからこうなるんだよ。」 「俺が信用無いって決めつけるとかお前ゴミかよ?」 俺、ちょっと我慢できないかも。 「何で私がゴミってなるの?」 「もういい!」 「あっ、それは…」 ガッシャン! 耳をつんざくような花瓶が割れる音とともに、鋼兵が花瓶を投げた方向を見て絶句した。 冠那ちゃんの机に花瓶を投げつけ、荷物からは水が(したた)っている…。 俺はもう我慢しない。冠那ちゃんの為なら。 「おい鋼兵、お前は自分が何をしたか分かっているのか!」 「お、俺だって…」 「黙れ!逆切れで冠那ちゃんを傷つけたお前を許すわけにはいかない!俺と正々堂々戦え!」 「お、俺の父さんは県会議員だぞ!」 「お前の親なんざ知ったことか!何だ⁉親の権力を横暴するつもりか!」 「俺の父さんにかかれば、お前を戸籍から消すなんて簡単だぞ!」 「ああ、そうか。やれるモンならやってみろ!」 「京祐くん、もうやめてよ…。」 「だってコイツは…ぁ。」 泣いてる。何で冠那ちゃんが泣いてるんだ? 「京祐くん、息が切れるくらい私の為に怒ってくれたけど、私はいつもの優しい京祐くんがいいの。だから、そんなに怒らないで。お願い。」 「冠那ちゃん…。」 俺はどうやら、我ながら恥ずかしいことをしていたようだ。冠那ちゃんを守らないと、なんて使命感を持って…。お願いもされてないのに勝手に。 「冠那さん、鋼兵さん、京祐さん。朝から一体何をしているんですか?」 「あ、義姉(ねえ)さん…。」 「男2人が朝から女の子の取り合いですか?」 「いえ、鋼兵が…」 「人の所為にしないの。冠那さんを泣かせた一因は京祐さんでしょ?」 「は、はい…。」 そして、2時間近くぶっ通しで取り調べが行われた。 俺の今回の反省としては、冠那の彼氏としてのあり方を間違え、冠那を泣かせてしまったことだろうか。 ともかく、これからは今回みたいな事件は起きないでほしいな。 「ところで、なぜ鋼兵さんは冠那さんにいじめられたと嘘を広めたのですか?」 「帝威と音辻がリア充してて腹がたったんだよ。」 「冠那さんと京祐さんが?」 「ま、まあそれは本当ですが…。」 「…そうですか。とりあえず、SNSでトラブルを起こすのはよくありません。鋼兵さんには後日ご両親と一緒に来てもらいます。」 「は?冗談だろ?」 「先生に向かってその口の利き方は何ですか?鋼兵さんには今回のことの重大さを理解してもらわないといけません。」 「何だよそれ…。」 「とりあえず、教室に戻って授業を受けてください。あ、京祐さんと冠那さんは残って。」 「「え?」」 「それで冠那、何でいつの間に男ができたの?よりによって転校生のクラスメイトと…。」 「実は、ちょっと出会い方に運命を感じちゃって。」 「どんな出会い方?」 そして冠那は俺との出会い、そして今に至るまでの全てを先生に話してしまった。 「ねぇ、急に男ができて叔父さんは許してくれたの?赴任中でしょ?」 「一応、お母さんがお父さんに電話で話してはくれたみたいだけど…。」 「まぁ、何がともあれおめでとう。」 「えっと、先生って冠那の親戚なんですか?」 「京祐くん、怒ってた時私のこと冠那ちゃん呼びしてたよね?」 「しまった。」 「私はその方がいいな。」 「わ、分かった。」 「えっと、先生は冠那ちゃんの親戚なんですか?」 「まぁ従姉妹(いとこ)、だね。あと、私が冠那を冠那呼びする時、お前を京祐呼びしていいか?」 「いいですけど…」 「これからもしっかり冠那を守ってくれ。」 「ごめん、俺がもっと冠那のことを考えて動いていれば…。」 「京祐くんの所為じゃないよ。これからも私を好きでいてくれるなら、許してあげる。」 「あんなことがあったのに好きでなんていられないよ。」 「え?何で…?ねぇ、これからも一緒でいてよ!」 「好きではいられない。もう大好きになっちゃったんだ!」 「京祐くん…。大好き、私も。」 「お2人さん、熱いところ失礼。実は、軽音部で提案したいことがある。」 「「提案?」」 第1章完 第2章もお楽しみに
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