彩りを君に

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 二人並ぶ帰り道。西日が二つの影を長くする。 「あの三人がね、今日謝ってきたの」  関口さんをからかっていた例の三人組だ。 「え。いいことなんだけど、急にどうして?」  今まであんなに散々からかっていたのに……。 「伊藤さんが『もうからかうのやめない?』って、二人に言ったんだって。ずっと仲間はずれになるのが怖くて、みんなでからかって面白がってるフリをしてたみたい」  あぁ……、女の子のめんどくさいヤツだ。みんな同じじゃないと友達じゃない……みたいな。 「からかうの嫌だなってずっと思ってたところに、竹内くんに言われて目が覚めたって言ってた」  僕の小さな行動が、伊藤さんの勇気になったんだ。聞いていて胸が熱くなった。 「そしたら他の二人も本当はやめたかったんだけど、引っ込みがつかなくなってたみたいで、ごめんって」 「そうなんだ……」  話を聞きながら関口さんの気持ちや、勇気ある三人組に一人で感動して、目頭が熱くなった。 「竹内くんって、意外と涙もろいね」 「いや、そんなことはない」  口ではそう言いながら、鼻水が言うことを聞いてくれなくて、ズルズルと鼻をすすった。  堪えきれずに笑う彼女が西日に照らされて眩しいんだ。 「いや〜、夕日が眩しいな〜。目に沁みる〜」  ごまかしたつもりが全然ごまかせていない。 「今日は良いことがいっぱいあったなぁ」  関口さんの一番いい笑顔を、僕はもらった。
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