彩りを君に

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 上を向いて歩いていたわけじゃない。でも何かを察して空を見上げた。  風に乗って一枚の紙がひらひらと舞っていた。  ――一体どこから?  辺りを見回しても、この紙切れを気に留めている人はいない。落とした本人がいるのなら、例えば校舎の窓から顔を出して見ていたりするだろう。しかし誰もいない。どういうことだ。落としたことに気付いていないのか? なぜか身体が自然と舞い落ちる紙を追いかけた。  運悪く、紙は木に引っかかってしまった。キョロキョロと見渡して、校舎の二階の窓からなら取れるかな、と思ったものの、窓から離れているところに引っかかっていたので、手は届きそうにないとすぐに察した。  別に僕のものでもないし、取れなかったからといって僕は困らない。そうやって無視することもできた。  たった一枚の紙切れなのに、妙に気になって仕方ない。  一つ、策を思い付いた。  僕はローファーを脱ぎ、木に引っかかっている紙に向かって投げた。命中ならず。無情にもローファーのみ地面へ落ちた。惜しかった。あと少し左に寄っていたら落ちてきたかもしれない。よし、もう一度。
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