彩りを君に

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「言いにくいなら、福本に返事言ってきてあげようか?」  気を遣ってそう言ってみたけど、関口さんは自分で言うから大丈夫と僕の提案を断った。福本も直接関口さんから言われた方が嬉しいだろう。 「分かった」  そして、彼女は教室に入り自分の席に着いた。  なんだろう。何か言いたげな表情がやけに頭から離れない。  放課後に福本へ言うと、彼女はそれだけ僕に教えてくれた。緊張感が伝わってきたのか、なんだか僕までソワソワしてくる。  ――なんて返事をするんだろう……  一日中、そのことばかり気になっていた。  福本は去年から関口さんのことずっと好きだったんだと思う。ずっと好きで、勇気出して告白したんだ。「いいよ」という関口さんと、半泣きで喜ぶ福本が容易に想像できた。良かったね、関口さん……。君は一人じゃないんだよ、ちゃんと見てくれる、気にしてくれる人がいるんだ。  二人を応援したい気持ちはあるのに、なぜか釈然としない。この違和感は何だろうか。心の奥がチクリと痛む。その痛みがずっと後を引いている。
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