彩りを君に

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 今度は当たったけど、落ちるには至らなかった。残念。「惜しい!」と心の声がつい漏れた。  三度目の正直か、二度あることは三度あるか、どっちだ。再びローファーを投げた。が、ダメだった。  僕が木に向かってローファーを投げている間に、何事かと周りに数人集まってきていた。夢中になっていて気が付かなくて、ざわざわしてきて気が付いた。なんだか少し恥ずかしかったが「頑張れ!」「次は当てろよ!」と、無関係の生徒たちが全然知らない僕のことをささやかに応援してくれていた。  妙な一体感だ。だんだん気分も上がってくる。みんなの期待を背負って、僕はローファーを投げた――  ――やった!  ローファーと共に、その紙は落ちてきた。見守っていた周りの人たちも歓声を上げた。観衆の中にクラスメイトの山下がいて、「竹内、それ何?」と話しかけてきた。 「いや……、僕も分からないんだけど……」  その紙には、 「ずっと好きでした  付き合ってください」  と、書いてあった。 「お前マジか! ラブレターじゃねえか! やるなぁ!」 「いやいやいや! 僕のじゃないし! 落ちてきたんだよ!」
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