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僕のものではないから必死で否定した。
「えー、お前のじゃねえの? じゃあ誰の?」
「誰だろ」
裏表確認したけど、名前はどこにもない。
山下がラブレターと騒ぐから注目の的だったが、誰宛かも誰からかも何の情報もないことを知ると、バラバラと人は去っていった。
「じゃあ、オレも行くわ」
そう言って山下もいなくなり、僕は一人になった。手には誰のものかも分からないラブレター……。
途方に暮れていると、物陰からこちらを見ている一人の女子と目が合った。あれは同じクラスの関口さん?
「それ、私が窓から捨てたの」
関口さんは冷めた顔でそう言い放った。
「下まで降りてきたら、なんか騒ぎになってて……。ごめんね、巻き込んじゃって」
「なんで捨てたの? ごめん、見ちゃったんだけど、これラブレターじゃん」
手紙を渡すと、関口さんは乱暴に制服のポケットへ押し込んだ。
「どうせ誰かのいたずらよ。名前も書いてないでしょ」
まぁ……確かに……。でも本当にラブレターだったら、書いた人かわいそうだな……と思ってしまった。
「私、クラスで浮いてるでしょ。こういうこと、よくあるの」
「え……」
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