彩りを君に

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「関口さん、おはよう」  まずは挨拶することから始めてみた。 「お、はよう……」  最初は驚いてキョトンとしていた関口さんだったが、二、三日続けると慣れてくれて、彼女の方から挨拶してくれるようになった。  徐々に「今日晴れたね」とか「宿題やった?」など、差し支えのない程度の会話もできるようになった。 「この英文の訳、分かる? なんか意味わからなくて」  休憩時間に聞いてみた。 「それ熟語だから訳が違うよ」  そう言って自分のノートを開いて僕に見せてくれた。 「へぇ〜。なるほどね。関口さんって英語得意なの?」 「普通だよ」  三人組はみんなにバレないようにちょっかいを出していたので、僕が関口さんと話していると近寄ってこないということが分かった。  それがわかったのは収穫だったけど、でも僕もずっと一緒にいられるわけじゃない。  僕がトイレに行って教室に戻ってきた時に、例のごとく三人組の一人、杉浦さんがわざと関口さんの机に当たってきたのをちょうど見てしまった。机が音を立ててずれて彼女の筆箱が床に落ちた。  謝る様子はなく、少し離れたところでクスクスと笑っている。何も言わずに我慢している関口さんのことを思うと、沸々と怒りが込み上げてきた。
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