彩りを君に

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「おい、ぶつかっただろ、謝ったら?」  杉浦さんは驚いて僕の方を見た。きっと今まで誰も言ってくる人がいなかったんだろう。 「ご、ごめん」  三人でブツブツ言いながら、揃ってその場から離れていった。  筆箱を拾っていた関口さんと目が合った。なんだか急に恥ずかしくなって、飼ってる犬の話とかどうでもいい話をして、さっきのことはなんでもなかったことにしようとした。 「ありがとう」  微笑む関口さんの肩につかない髪がゆっくり揺れる。何か話せば全部顔に出てしまいそうで、普通を装って「何が?」という態度をとってしまっていたけど、明らかに僕の耳は赤くなっていた。そんな僕を見て、彼女は「ふふふ」と笑った。  その後もすれ違いざまにクスクス笑うのも、僕が「何がおかしいの?」と言い返したら、「別に……」と言って去っていった。それ以降、クスクス笑うのも見かけなくなった。  もしかしたら、本気でいじめるつもりはなくて、ちょっとからかって仲間内で笑いのネタにしようと思っているだけなのかもしれない。でも、関口さんが毎日どんな気持ちで我慢していたのか、考えただけで怒りが込み上げてくる。誰も何も言わないから、余計に面白がってやるんだ。
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