映画館デート。

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結局、映画館へ来てしまった。 「新奈はどれ見たい?」 「え?見たい映画があるんじゃないの?」 「俺は、新奈の見たい映画が見たい」 「なにそれ」 あんなにしつこく誘うから、見る映画はもう決まってるんだって思ってた。 「じゃあ、あれにする」 私が指差したのは、猫が主人公のハートフルな冒険映画。 予告を見てから、ずっと気になっていた作品だ。 「新奈らしい」 「そう?」 伊吹くんは優しく笑う。 本当にキレイに笑うなー。 うっかり見惚れていると、伊吹くんがこっちを見た。 「なんかついてる?」 「うんん…!」 急に目が合うからびっくり。 って、それだけ私が伊吹くんを見てたってことか。 チケットを買ってドリンクも頼んで、選んだ席に座る。 「ここカップルシートじゃん!」 「カップルなんだからいいでしょ?」 静かにしなよって、そのまま伊吹くんはカップルシートに座った。 「いやいや、カップルではないよね!?そもそも私は伊吹くんのこと好きになっちゃいけないんだよね?ねー、ずっと思ってたけど伊吹くんって言ってる事とやってる事、めちゃくちゃ矛盾してるよ!?」 「ほら、始まっちゃうから静かにしなよ」 もう…なんなの?! その言い方、怒ってる私が悪いみたいじゃん。 何も言えなくなった私を見て、伊吹くんはクスクス笑ってる。 分かった。 映画が終わったらしっかり問い詰めてやる。 見たかった映画に集中したいから、今は!引き下がってあげるんだからね! しばらくすると映画館のブザーがなって、辺りが暗くなった。 てか。 我ながら思うけど、伊吹くんは私と映画なんて一緒に見て楽しいの? 映画も私に選ばせてくれたし。 カフェに行った時だって、私の食べたいものに合わせてくれた。 伊吹くんは何の目的があって私に関わってくるのか、本当に分からない。 そんな伊吹くんをこっそり盗み見しようとすると、また目が合ってしまった。 目が合うとニコっと笑う伊吹くん。 私は表情をピクリともさせずに、スクリーンに顔を向き直した。 やっぱり伊吹くんと一緒にいるとソワソワする。 でも映画が始まるとそんな気持ちも少しずつ落ち着いてきて、どんどん作品の世界観にのめり込んでいった。 それはもう、伊吹くんが隣にいることを忘れるくらいに。 そうだよ。 誰が隣にいようと、関係ない。 2時間くらいあっという間だ。 そう思ったのに。 直ぐにまた伊吹くんで頭がいっぱいになる。 …っ!? 伊吹くんの頭が私の肩に乗ったのだ。 もしかして…寝てる? 寝てるの!? 心臓がバカになったみたいにドキドキいってる。 今までにない距離感で、意識せずにはいられなかった。
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