映画館デート。

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電車に乗り込むとすごい混んでいて、いつも以上に車内はぎゅうぎゅうだった。 私と渉は扉付近に立つことになった。 なのに、私は全然苦しくない。 渉が私をかばってくれてるんだ。 渉はいつも優しい。 「私は大丈夫だからもっと寄っていいよ?」 「俺は大丈夫だよ」 「いいから」 そう言って渉の腕を引っ張った。 渉は私を心配するくせに、渉自身のことはおろそかになっているのを知っている。 「なにすんの?」 「寄りかかっていいよ。ちょっとは楽しなよ」 私は渉が心配だからそう言ったのに、渉はなぜか眉間にシワを寄せた。 電車を降りて、いつもの帰り道を渉と一緒に歩く。 「こうやって一緒に帰るの、久しぶりだね」 「そうだな」 「そういえば渉、部活はどんな感じ?」 「ブランクあるから結構きつい。けど楽しいよ」 渉は最近、サッカー部の練習に出るようになった。 先生からサッカー部に入らないかと何度も言われていたけど、ずっと断っていた渉。 今回は怪我人が出て、どうしてもと言われて仕方なく参加しているようだった。 渉は小学校の頃からサッカーをしていて、高校に入っても続けるものだと思ってた。 だけど辞めてしまったから、どうしてだろと思っていたけど、嫌いになったわけじゃないみたい。 「楽しいならそのまま続ければ?」 「うーん、それはないかな」 「なんで?」 「まあ、色々あるんだよ」 そう言って眉を下げながら微笑む渉。 サッカーを辞めた理由を私に教えてくれないのが少し寂しかった。 私にも言いずらい何かがあったのかな。 「いつもこんな時間まで部活なの?」 「そうだな、だいたいこの時間」 「毎日大変だねー」 「てか新奈こそ、こんな時間まで遊んでちゃダメだからな?」 「渉ってホントお父さんみたいなこと言うよね」 「心配なんだよ」 そっか。 さっき、渉が不機嫌そうに見えたのは、私がこんな時間まで遊んでたからか。 渉が私のことを心配するのには理由がある。 私がまだ中学生の頃、帰るのが少し遅くなって、不審者に襲われそうになったことがあった。 心配して私のことを探していた渉が発見してくれて、私は助かったんだけど。 それ以来、渉は過保護なまでに私を心配する。 クラスが離れても迎えに来てたのは、そのことがあったからだと思う。 「ねえ、ちゃんと分かってる?新奈は隙が多いんだよ?」 「分かってるよ!そのために護身術も学んだし、防犯グッツも持ち歩いてるもん」 「そういうことじゃなくて。はー、心配すぎる」 「え、なんで!?」 今防犯対策の話してたよね? 渉はなんの心配をしてるの? 「なんででしょう」 渉はそう言いながら私のほっぺたをつねった。
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