水族館デート。

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席替えをして間もなく、課外授業に行くことになった。 席で班を決めたから、伊吹くんとは同じ班になってしまった。 桃々とも同じ班になれたことが唯一の救いだけど。 課外授業の行き先は水族館・植物園・裁判所・城から選べる。 私たちの班は水族館を選んだ。 桃がペンギン好きで、ゴリ押ししたのだ。 「水族館、初めて来た」 ぼそっと、そうつぶやく伊吹くん。 「まじで?デートとかで来ねーの?」 「そうやって俺にふっておいて、自分が彼女ときたことがあるから俺に自慢しようとしてるな?」 「ばれたー?実は最近ここ来てさ」 「いや、聞いてねーから」 水島くんと伊吹くんの会話は聞いたらダメなような気がするのに、楽しそうに大きな声で喋ってるから聞こえてきてしまう。 確かにあーやって水島くんに自慢されてたら、焦って自分もデートしてみたくなるのかも。 伊吹くんなら、私に頼み込まなくてもすぐ実現できるはずのにな。 「あれ、新奈も水族館だったんだ?」 後ろから私に声をかけてきたのは渉だった。 どうやら渉も水族館を選んでいたらしい。 「懐かしいよな、ここ」 「昔、おばさんに連れてきてもらったよね」 「なー、覚えてる?あの時、確かヒトデを…」 「もう、それは忘れて!」 渉は私の黒歴史を喋ろうとしたから、すぐに止めた。 クラスメイトに聞かれていたら恥ずかしい。 「ほら、もうすぐ時間だから渉は自分の班に戻りなよ」 「はーい。あ、そうだ。今日部活ないから一緒に帰ろ?」 「うん、分かった」 渉に返事をすると、渉は自分のクラスの方に戻って行った。 「相変わらず渉くんと仲良しだねー」 そう言ってニコニコしてるのは桃々。 「普通だよ」 「ねー、知ってる?渉くん最近サッカー部に入ってから、女子に人気あるんだよ」 「え、渉が?」 桃々はテニス部で、サッカー部が使っているグラウンドのすぐ隣にテニスコートがあるから、たまに渉情報を私にくれる。 「新奈はそばにいすぎて、感覚が麻痺しちゃってるんだよ。身長も高いし優しいし?かなり優良物件だと思うんだけどな」 「そうかなー」 今までずっと近くにいたから、よく分からなかったけど、桃々が言うならそうなんだろう。 そういえば、今まで渉に彼女がいるとか聞いたことがない。 もしかしたら私が渉の恋愛邪魔してる…? そう思うと、渉に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。 「私、渉と一緒にいるの、もっと控えようかな」 「なんでそうなるのよ」 「渉の恋愛、邪魔したくない」 「え?本気で言ってる?」 なぜか桃々は呆れ顔をした。 「渉くんが不憫ね」 そう付け加えて。
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