水族館デート。

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カメのコーナーでカメを見ながら色々喋った後、お土産コーナーに来た。 桃々たちのところに戻ると思っていたのに。 「なにか買うの?」 「新奈とお揃いのもの買いたい」 伊吹くんはどこまでもデート気分を味わいたいみたいだ。 「分かった」 「あれ、反抗しないんだ」 「反抗したって、どうせ言動の力でねじ伏せるでしょ」 「言い方!」 そう言いながら、笑う伊吹くん。 だって仕方ないじゃん。 私もお揃いのもの、ほしいと思っちゃったんだもん…。 キーホルダーや文房具、いろんなお土産があって目移りする。 伊吹くんも、「これもいいけど、あれもいいな」って迷っている様子だった。 「伊吹くんって意外と優柔不断なんだね」 「えー?いつもはすぐ決まるよ」 「そうなの?」 「けど今日は、新奈とお揃いのもの買うから。慎重に選びたいじゃん」 「そっか」 伊吹くんの言葉一つ一つが嬉しいと思ってしまう。 やっぱり本当に付き合ってるんじゃないかって錯覚してしまう。 伊吹くんが真剣にお揃いのものを選んでいる横顔を見ていると、胸がぎゅーってなる。 どうしよう、このままじゃ私…。 「これとかどう?」 私の気持ちなんて全然知らずに、無邪気に聞いてくる伊吹くん。 伊吹くんが手に取っていたのはブレスレットだった。 細い紐が何重にもなっているブレスレットで、小さな貝殻のチャームがついている。 男子がつけても大丈夫そうな、かっこいい感じのデザインだ。 「うん!かわいい」 2人でレジに行って、赤と青の色違いを買った。 伊吹くんとお揃いのものを買っちゃった。 しかも身につけるやつ…。 こんなの買ったところで、学校につけていけないって分かってるのに。 嬉しい気持ちの方が大きいなんて…。 お土産屋さんを出るともう1時間くらい経過していた。 そろそろ桃々たちのところに戻んないと。 戻ったら桃々になんて言われるかな。 そんなことを考えていると、伊吹くんは「あとちょっとだけいい?」って言って、お土産コーナーの裏にまわった。 「こんなところに来てどうしたの?」 伊吹くんは私の質問には答えず、さっき買ったブレスレットを袋から取り出した。 「腕、出して」 「え?」 戸惑っている私の腕を伊吹くんが持ち上げる。 そして袖を少しまくって、さっき買ったブレスレットを私につけてくれた。 「うん、似合ってる」 「…ありがとう」 まさか今つけてくれるなんて思ってもなかった。 自分でも顔が赤くなったのが分かる。 建物の影だから伊吹くんに気づかれてないよね…。 そう思って伊吹くんの顔を見ると、伊吹くんと目が合ってしまった。 「っ…」 もう心臓が張り裂けそうになる。 なんで私、こんなにドキドキしてるの…。
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