水族館デート。

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もう、ペンギンのふれあいタイムは終わってる時間。 中抜けしたとことを、班のみんなになんて言い訳しよう。 そう考えながら歩いていると、早々に班のみんなと遭遇してしまった。 「お前らどこ行ってたんだよー」 「探したよー?!」 わ、どうしよう!? なんて言いえばいいかな…。 「ごめーん、みんな!俺方向音痴でさ!」 伊吹くんは顔の前で両手をぱちんと合わせて、大きな声で謝った。 「途中でみんなのこと見失っちゃって。俺の後ろにいた井上さんまで巻き込んじゃった、ごめん」 「お前、そーゆーとこあるよな」 「井上さんに謝れ」 みんな伊吹くんの言葉に納得したようで、それからは何も言われなかった。 本当に伊吹くんは口が上手いなぁ。 でも桃々はごまかせなかったみたいで。 「いや、嘘じゃん?なにごと?」 察しのいい桃々は困惑していた。 「やば、もうこんな時間!」 班の1人が時計を見て、声を上げる。 気がつくと集合する時間がきていて、急いで水族館の出入り口に向かった。 班ごとに整列して、先生の話を聞く。 私はブレスレットの付けられた腕を、長袖の上からぎゅっと握る。 なんか、伊吹くんと秘密を共有しているみたいで、謎にドキドキする。 きっと今の私は感覚が麻痺してるんだ。 いやだって、仕方ないじゃん。 伊吹くんに、あんなことされたら惚れない女子なんていないよ?! って心の中で言い訳をしてみる。 この気持ちは多分一時的なもの。 頭ではちゃんと分かってるから。 このドキドキが収まるまでだから…。 私は目の前にいる伊吹くんの後ろ姿を、まじまじと眺めた。 伊吹くんのブレスレットも長袖で隠れてる。 そういえば、伊吹くんの後ろ姿ってあんまり見たことなかったかも。 サラサラの髪が風になびいて、いい香りが私まで届く。 この香り。 映画館の時のことを思い出すなー。 「新奈?」 気がつくと先生の話はもう終わっていて、すぐ隣に渉が来ていた。 「あれ、渉?」 「何ぼーっとしてんの?」 「あー、ごめん」 やば。 考え事をしている間に、先生の話が終わっていたらしい。 辺りを見渡すとみんなそれぞれ帰りはじめていた。 桃々も私に手を振って、帰っていく。 目の前にいた伊吹くんも、いつの間にかいなくなっていた。
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