デートのお誘い。

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え? 「…今なんて?」 「だから俺とデートして」 「私が?」 「ここには井上さんしかいないじゃん」 皆藤くんはそう言って私の目をじっと見つめてくる。 初めてこんなにしっかり皆藤くんの顔を見た気がするけど、本当に整った顔だな。 そのキレイで整った目に見つめられると、なんだか恥ずかしい。 皆藤くんは本気なのか冗談なのか、よく分からない。 「な、なんのために…?」 そうだよ。 からかっているにしても意図が分からない。 「井上さんのこともっと知りたいから、って理由じゃダメ?」 皆藤くんの甘えるようなまなざしと発言は、とんでもなく破壊力があった。 不覚にも心臓が飛び跳ねてしまう。 あ、あれだよ? デートしたいなんて初めて言われたから、びっくりしただけ。 「いや、うーん…」 もしかして、皆藤くんって実は私のこと… なんて己惚れかけた時、皆藤くんがまた口を開いた。 「最近、蓮に彼女ができてさ」 蓮(れん)と言うのは皆藤くんとよく一緒にいる水島(みずしま)くんのことで、彼もまた目立っている人物だ。 「俺、めっちゃ暇なの」 「そうなんだ?」 「でね、蓮がめっちゃ彼女のこと惚気てくるわけ」 「…うん。…で?」 「だから俺とデートして」 「さすがに意味分かんないんだけど」 「いや分かるでしょ」 皆藤くんは机に頬杖をつきながら真顔で言い放った。 水島くんに張り合う為にデートするの? いや、だっておかしいよ。 皆藤くんモテるじゃん。 「皆藤くんとデートしたい子なら、他にいっぱいいると思うけど…」 私は皆藤くんが好きだという女の子、何人も知っている。 その子たちに頼めば即デートしてくれそうなのに。 なんであんまり喋ったことない私にこんなことを言うんだろう。 「俺、面倒くさいの超苦手なの」 「うん?」 「束縛とかされるの嫌いだし、友達優先したいし?」 言いたいことは分からなくもない。 「だから、俺にあんまり興味なさそうな井上さんがいいんだけどなー」 そう言いながらやっぱり目をじっと見てくる皆藤くんは、女の子に慣れてるなーって思う。 じゃあ、なにか。 私は皆藤くんに興味のない人間代表として選ばれたわけか。 ちょっと納得。 …って、いやいや待って。 「俺とデートしたら楽しいよ?」 ほら、そんな甘い顔して。 惑わせてくるみたいに言うから、つい流されてしまいそうになる。 確かに普通の女の子だったら即OKしてしまうだろう。 それくらい皆藤くんのまとっている雰囲気や表情は魅力的だ。 「でも、デートっていうのはちょっと…」 私はそう言ってやんわり断ろうとした。 デートなんてしたことのない私に、皆藤くんのお相手が務まるとは到底思えない。 なのに、皆藤くんはなぜか引き下がらない。 「だって、その渉って人は彼氏じゃないんでしょ?」 「…そうだけど」 「渉くんとは一緒に帰るのに、俺はダメなの?」 いや、渉とは一緒に帰ってるだけでデートじゃないし。 「なんで俺とじゃダメなの?」
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