最後のデート。

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最後のデート。

結局、昨日は一睡もできなかった。 はっきりと自分の気持ちに気がついてしまった。 渉から言われた言葉で気づくなんて。 しかもその直後に渉からの告白。 もう、どうしたらいいか全然分からない。 なんで今まで渉の気持ちに気付けなかったんだろう。 だって、渉、私のこと好きとかそんな素振り見せなかったじゃん。 それとも私が鈍いだけ? 「あー、もう!」 私は布団をかぶって、考えても何も導き出さない頭をかかえた。 何も答えが出ないまま、時間だけが無駄にすぎていく。 ついに母に叩き起こされた私は、寝不足のまま幽霊のように支度を始める。 もはや頭は、なんの機能もはたしていない。 なんとか朝の準備をこなし家を出ると、渉が家の前にいた。 「新奈、おはよ」 「…おはよ」 昨日の今日で会うのが気まずいのは私だけだろうか。 結局昨日は返事はせずに、「考えさせてほしい」とだけ言った。 今まで渉のこと、恋愛対象として見てなかったから。 だから、あんな真剣に自分の気持ちを話していた渉に、ずっと驚いている。 「朝来るなんて珍しいね」 「新奈と少しでも一緒にいたいから」 「…っ!!」 今までそんなこと言ったことないのに。 どうしちゃったの、渉。 「昨日、寝れた?」 「…一睡も」 「実は俺も」 そう言いながら笑う渉。 そっか。 渉も寝れないくらい、私のこと考えてくれているのか。 「でも自分の気持ち言ったらスッキリしたわ」 「そ、それは良かったです…」 「これからは俺のこと、ちゃんと考えて欲しい」 「も、もちろんだよ!」 昨日の告白はびっくりしたけど。 渉の気持ちは素直に嬉しかった。 だからちゃんと向き合おうと思ってる。 学校に行くと、いつも私より早く来ている伊吹くんの姿がなかった。 そういえば昨日のあれ…見られてたかな。 多分、私の唇に触れたのって渉の唇だったんだよね…。 渉は今日も何も言わなかったけど…。 私から、昨日キスした?なんて、とてもじゃないけど聞けないし。 でも仮にキスされたとして、そんなところを伊吹くんに見られてたとしたら…。 …ムリだな。 よし。 見られてない前提でいこう。 何もなかったかのように、普通に。 今まで通り、普通に接するんだ。 そう意気込んでいたのに伊吹くんは今日、学校に来ることはなかった。 どうしたんだろう。 やっぱり昨日の…。 って、さすがにそれは自意識過剰! たとえ見られていたとして、そんなことで休むような人じゃない! じゃあ、なんで休んでるんだろう。 もう、伊吹くんの席を横目にため息しか出なかった。
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