デートのお誘い。

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なんか皆藤くんの圧がすごい…。 「じゃあ、俺の行きたいお店に付き合ってくれるだけでいいから!ね?」 お願いー!って言いながら、さらりと私の手を握ってブルンブルン振る皆藤くん。 「ちょっ、離して」 「OKしてくれたら離してあげる」 …。 どうも皆藤くんと話してると調子が狂うっていうか。 皆藤くんのペースにまんまと乗せられてるっていうか。 それが、皆藤くんの人気の秘密なんだろうなーとは思うけど。 「さっき、日誌のお礼になんでもするって言ったじゃん」 そう言われると何も言えない…。 「…分かった。分かったから手、離して」 「まじで?やったー!」 ううっ…。 皆藤くんの笑顔が眩しい。 でも日誌書くの手伝ってくれたし。 デートって言ってたけど学校帰りに寄り道するだけっぽいし。 そこまでして皆藤くんを拒む理由も持ち合わせていない。 デートに合意したにも関わらず、なぜか手を離してくれない皆藤くん。 そんな皆藤くんは私の表情を見ながら真剣な面持ちでこう言った。 「でも、一つだけ約束してくれる?」 「な、なに?」 含みをもたせて口を開く皆藤くんは、何を言い出すのか予想ができなくて、ちょっと怖い。 「俺のこと、絶対好きにならないでね」 さっきの高テンションの皆藤くんとは、うってかわって低めのトーン。 「な!ならないよ!」 笑顔とのギャップがすごくて、ゴクリと生唾を飲む。 「約束ね」 皆藤くんは冷静にそう言って、ずっと握っていた私の手を離した。 私の頭は”はてな”でいっぱいだ。 好きになったらダメなのにデートするの? あ、そっか。 さっき面倒くさいの嫌いって言ってたっけ。 好きになられると面倒なのか? じゃあ、なんでデートするの? …。 困ったな。 モテる人の考えていることが全然理解できない。 「実は行ってみたいカフェがあって」 皆藤くんはそう言いながらスマホ画面を私に見せてくる。 このカフェは私も見覚えがあった。 「ここって駅前の新しくできたとこ?」 「そう!ずっと行きたかったんだけど、男子だけじゃ入りずらいじゃん?」 皆藤くんが提案してきたお店は私も気になっていた。 仲良しの桃々(もも)はいつも部活で、なかなか予定が合わないし。 もしかして、皆藤くんは私とデートがしたいんじゃなくって、あのカフェに行ってみたかっただけなのかも。 だとすると好きにならないでって言ったことも腑に落ちる。 それならそうと最初っからそう言ってくれればよかったのに。 なんでデートなんてまぎらわしい言い方したんだろう。 「そのお店、私も行きたいと思ってた」 「まじ?すごい奇遇だね?運命?」 「いや、運命って」 びっくりするぐらい軽いノリで言葉を並べる皆藤くん。 さすがにここまでくると清々しい。 そんな皆藤くんを見てると、色々気にしてたことがバカらしくなってきた。 行きたかったカフェにも行けることだし。 成り行きで変なことになっちゃったけど、自称デート?思いっきり楽しもうと思った。
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