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「入院って、なんで…?」
「え、さっきの話聞いてたんじゃ。あ…」
確かに水島くんの電話の感じで、何か大変なことになってそうなのは伺えたけど、入院のところは聞いていなかった。
「どこか悪いの?」
「いや、これ以上はさすがに…」
「そうだよね、ごめん」
伊吹くんどこか悪いの?
あ、骨折したとか?
でもそれだったら隠す必要ないよね?
入院って言っても、すぐ退院できるよね?
すぐ良くなるんだよね?
伊吹くんのことで頭がいっぱいになっていると、チャイムがなった。
「まじで誰にも言わないで」
そうやってお願いする水島くん。
「言わない、誰にも言わない」
けど…。
本当に大丈夫なの…?
水島くんから伊吹くんが入院していると聞いてから、授業なんて何も耳に入ってこなかった。
桃々との会話も上の空。
そして自分に言い聞かせる。
大したことないって。
きっとすぐ学校に来るって。
だって、最近まであんなに元気だったじゃん。
さっきだって水島くんと普通に話してたし。
うん、きっと大丈夫。
私が心配するようなことじゃない。
「新奈?大丈夫?」
「え?」
「ずっと呼んでるのに返事ないから」
「ごめん、考え事してた…」
いつの間にか放課後になっていて、渉が私の教室まで迎えに来ていた。
「顔色悪いけど大丈夫か?」
「あ、うん、大丈夫だよ」
「全然大丈夫って感じじゃないけど」
「そんなことないよ」
「何かあった?」
渉は優しいトーンの声で、私の顔を覗き込んだ。
でもこんなこと渉に言えない。
それに水島くんにも誰にも言わないでって言われてる。
「本当に何もないって。帰ろう?」
私はそう言ってカバンを持って席を立った。
渉は不満そうな顔をしながら、その場から動かなかった。
「なんで何も言ってくれないの?」
「え…?」
「俺ってそんなに信用ない?」
「そんなんじゃ…」
「幼なじみとしてでいいから。困ったら頼ってよ…」
なんで渉がそんなに辛そうな顔するの?
「実はね、友達の具合が悪いみたいで…心配で」
「そうだったんだ…」
「今日それ聞いたから、気になっちゃって。ごめんね」
「そっか…」
「うん…」
「お見舞いとか行かなくて大丈夫?」
「うん、大丈夫」
行こうにもどこに入院してるとか分からないし。
それに内緒にしてるってことは、来て欲しくないってことだよね。
「もしかして、その具合悪い友達って皆藤?」
「え、なんで…」
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