秘密ごと。

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腎臓の…病気…? え、なに? 水島くんが何を言っているのか、うまく頭に入ってこない。 「突然苦しみ出して、まじで焦ったわ」 「伊吹くん大丈夫なの!?」 「あー、もう安定してるから大丈夫だって」 「本当に?!ねー、本当に大丈夫なの!?」 「井上さん焦りすぎだって、落ち着いて」 「あ、そうだよね…ごめん」 私は胸に手を当てて、乱れた呼吸を整える。 その手が少し震えていた。 伊吹くん、病気って…。 大したことないんじゃないの? すぐ治るんじゃないの? 「俺も知らなかったからさ。 突然倒れた時は自分の心臓も止まるかと思った、まじで。 でも伊吹、苦しみながらも手慣れててさ。 ここの病院つれてけって教えてくれて」 「どこの病院…?」 「暁総合病院」 って、あの県で一番大きい病院…? 「あ、一応言っておくけど、命に別状はないみたい」 「本当…?」 「ほんとほんと。何回かお見舞い行ったけど、普通に元気そうだったよ」 水島くんの言葉を聞いて、やっとちゃんと呼吸ができた気がした。 「いつ、退院するの?」 「俺も詳しく知らねーけど、入院はもう少し続くみたい。 伊吹にみんなには言わないでって言われたけど、こんな長い間入院になるなら、言わない方が無理じゃね?」 水島くんはそう言ってため息をついた。 「みんな心配するよね…」 「だよなー。黙ってるのもしんどいって言うか? あ、これ、俺が井上さんに言ったってこと内緒ね?」 「うん。誰にも言わないけど…」 「すげー口止めされてたの。入院のこと誰にも言うなって」 え…。 「それなのに、なんで教えてくれたの?」 「その方が伊吹のためかなって。 って、ただの俺のエゴか。 俺、伊吹に本当に何も聞かされてなくって、すげー寂しかったからさ。 あいつはあいつなりに知られたくない理由があったのかもしれないけど、一応友達じゃん? 俺はどんなことでも言って欲しかったなーって。 だからこのブレスレットの色違いを持ってる井上さんなら、もしかしたら俺と同じ気持ちになっちゃうんじゃないかなーって思っちゃったわけ」 「そうだったんだ…」 「って、やっぱ今のもなし。 もう1人で抱えてるのしんどくなったっつーか? 誰でもいいから聞いて欲しかったのかも」 水島くんはそう言って、今にも雨が降り出しそうな空を見上げた。 私の知らないところで、水島くんはたくさんの葛藤と戦ってたんだ。 そしてそれだけ伊吹くんのこと、大事に思ってるんだ。 そんなの全然知らなかったよ…。 「いいよ。水島くんの抱えてるもの、半分もらう」 私がそう言うと、水島くんは力無く笑った。 「ははっ。ありがとう…」
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