カフェデート。

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そんなこんなで、いつの間にか駅前のカフェに着いていた。 学校から駅までの距離って、こんなに短かったっけ? あっという間にカフェについてびっくりしてる。 お店の中は混み合っていたけど、窓際の席が1つだけ空いていた。 「空いててよかったな」 「そうだね」 ここのカフェはパンケーキが売りで、私はこのパンケーキをずっと食べてみたかった。 お店の中はふんわりと甘い香りに包まれていて、それだけで幸せな気分になる。 「何にする?」 席に座ってメニューを開く。 パンケーキは何種類かあって、どれにするかすごく悩む。 「このベリーのやつもおいしそうだけど、はちみつも食べたいなー。悩む!」 メニューとにらめっこしながら、どっちらがいいかを真剣に考える。 「皆藤くんは決まった?」 「皆藤くん、じゃなくって?」 あ、そうだった。 「い、伊吹くんはどれにする?」 やっぱりまだ名前で呼ぶことに慣れない。 「俺はベリーのやつにするから、はちみつ頼みなよ。シェアしよ」 「へ?いいの」 「なにが?」 皆藤くんはきょとんとした顔で私を見た。 私の食べたいものに合わせてくれてるのかな。 だとしたらさすがに申し訳なさすぎる。 だって皆藤くんもこのお店、来てみたかったんだよね? 「私に合わせなくてもいいよ?せっかく来たんだし好きなもの頼んでよ」 「俺もその2つのどっちにしようか迷ってたんだよね。奇遇だね」 って皆藤くんは頬杖をつきながら笑う。 「でも…」 「実はシェアとか憧れてたんだ」 そう言って皆藤くんは店員さんを呼ぶボタンを押した。 男子はシェアとか嫌がるもんだと思ってた。 だって、渉はいつも嫌がってたから。 いつも私が一口貰おうとすると、食べたいなら自分で頼めよって言ってた。 渉以外の男子とはあまりしゃべったことがないから、男子はみんなそうなんだと思い込んでた。 皆藤くんみたいなタイプもいるんだ。 「好きな女の子と好きな食べ物をシェアできるなんて、最高に幸せじゃん?」 好きな女の子、か。 うっかりドキッとしてしまう。 皆藤くんはデート気分を味わっているだけなのに。 でもそんな言葉がさらりと出てくるなんて、本当にデートが初めてとかずっと疑う。 なんか私も彼女っぽいこと言った方がいいのかな。 「私も好きな男の子とシェアするの憧れてたんだ!嬉しい」 どうだ。 やっと可愛い女の子が言いそうな言葉を言えたと思ったのに。 皆藤くんの顔は一瞬、曇ったように見えた。 でも、それは気のせいだったと思えるくらい一瞬のことで、皆藤くんはいつのまにか笑顔になっていた。 「今、ちょっとだけキュンとした」 ほら、またそんなこと言って。 これは自分に好意があると勘違いされてもおかしくないからね? 好きになってほしくないんだったら、そんなセリフ言わない方がいいのに。
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