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「行こっか」
今日はプラネタリウムを見に行く約束をしていた。
電車に乗ると、座る席が空いていなくて、入り口付近に2人で立った。
電車に乗ってからも、ずっと手を繋いだままで、ちょっと恥ずかしい。
「…手術、大丈夫だった?」
「うん、この通りめっちゃ元気になった」
「それなら良かった」
伊吹くんはにっこり笑う。
手術前も伊吹くんが元気ないところなんて見たことなかったから、私から見たらいつも通りの伊吹くん。
今思えば、辛い時も無理していたのかもしれない。
「まだ通院とかしなきゃいけないけど、透析に通ってた時ほど時間の拘束もないし、ご飯の制限もだいぶ緩くなったんだ」
「そっか」
伊吹くんは私の心配そうな顔色を伺ってか、手術後の話を色々してくれた。
今まで大事なところは全然言ってくれなかったから、ちょっとだけ嬉しい。
「新奈の私服初めて見た」
「え」
変だったかな。
伊吹くんがどんな系統が好きか分からないから不安になる。
「すげーかわいい」
「あ、ありがとう」
伊吹くんはまじまじと私を見ていて、やっぱり恥ずかしい。
「新奈ってそーゆー系の服、着るんだね」
「そ、そうだよ?」
「いがーい」
え?うそ。どの辺が?
それはいい意味で言ってる?
悪い意味で言ってる…?
なんて、すぐに不安になる。
「伊吹くんはどんなファンションがタイプなの?」
「えー。新奈がタイプ」
「…服のこと聞いてるんだけど」
「新奈が着てる服なら、なんでもタイプ」
いつも思ってたけど、よくこんな恥ずかしい言葉をすらすらと言えるよね…。
不安な気持ちなんて、どっかいっちゃった。
「伊吹くんも私服、かっこいいね」
「…ほんと?」
「すごくタイプ」
「え…。新奈が珍しく褒めてくれた」
「珍しくって」
私、伊吹くんのこと結構褒めているつもりだったのに。
「新奈ってたまに、どストレートのジャブ打ってくるよね」
「え?どう言う意味?」
「めちゃくちゃキュンとしたって意味!」
そう言って伊吹くんはくしゃっと笑う。
そんな伊吹くんと改めて目が合うと、すごくドキドキする。
…いつもキュンとさせられてるのはこっちの方だよ。
久しぶりに会った伊吹くんは、あいかわらず元気そうで。
何にも変わっていなくて。
一緒にいると安心して。
居心地良くて。
「好きだなー」
思わず声に漏れてしまう。
そんな私の言葉に合わせて、
「俺も好き」
って言ってくれて。
私は今、世界一幸せなんじゃないかと思った。
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