これからも。

3/5
前へ
/71ページ
次へ
「行こっか」 今日はプラネタリウムを見に行く約束をしていた。 電車に乗ると、座る席が空いていなくて、入り口付近に2人で立った。 電車に乗ってからも、ずっと手を繋いだままで、ちょっと恥ずかしい。 「…手術、大丈夫だった?」 「うん、この通りめっちゃ元気になった」 「それなら良かった」 伊吹くんはにっこり笑う。 手術前も伊吹くんが元気ないところなんて見たことなかったから、私から見たらいつも通りの伊吹くん。 今思えば、辛い時も無理していたのかもしれない。 「まだ通院とかしなきゃいけないけど、透析に通ってた時ほど時間の拘束もないし、ご飯の制限もだいぶ緩くなったんだ」 「そっか」 伊吹くんは私の心配そうな顔色を伺ってか、手術後の話を色々してくれた。 今まで大事なところは全然言ってくれなかったから、ちょっとだけ嬉しい。 「新奈の私服初めて見た」 「え」 変だったかな。 伊吹くんがどんな系統が好きか分からないから不安になる。 「すげーかわいい」 「あ、ありがとう」 伊吹くんはまじまじと私を見ていて、やっぱり恥ずかしい。 「新奈ってそーゆー系の服、着るんだね」 「そ、そうだよ?」 「いがーい」 え?うそ。どの辺が? それはいい意味で言ってる? 悪い意味で言ってる…? なんて、すぐに不安になる。 「伊吹くんはどんなファンションがタイプなの?」 「えー。新奈がタイプ」 「…服のこと聞いてるんだけど」 「新奈が着てる服なら、なんでもタイプ」 いつも思ってたけど、よくこんな恥ずかしい言葉をすらすらと言えるよね…。 不安な気持ちなんて、どっかいっちゃった。 「伊吹くんも私服、かっこいいね」 「…ほんと?」 「すごくタイプ」 「え…。新奈が珍しく褒めてくれた」 「珍しくって」 私、伊吹くんのこと結構褒めているつもりだったのに。 「新奈ってたまに、どストレートのジャブ打ってくるよね」 「え?どう言う意味?」 「めちゃくちゃキュンとしたって意味!」 そう言って伊吹くんはくしゃっと笑う。 そんな伊吹くんと改めて目が合うと、すごくドキドキする。 …いつもキュンとさせられてるのはこっちの方だよ。 久しぶりに会った伊吹くんは、あいかわらず元気そうで。 何にも変わっていなくて。 一緒にいると安心して。 居心地良くて。 「好きだなー」 思わず声に漏れてしまう。 そんな私の言葉に合わせて、 「俺も好き」 って言ってくれて。 私は今、世界一幸せなんじゃないかと思った。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加