カフェデート。

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頼んでいたパンケーキが机に運ばれて、甘い香りでいっぱいになる。 「おいしそう!」 「だな!いただきまーす」 皆藤くんはベリーのパンケーキを口に運ぶ。 パンケーキを食べる仕草ですらかっこいいとは何事か。 本当にこの人は、私とこんなところでパンケーキを食べていていいんだろうか。 もっと私の代わりに、ここにいた方がいい人がいるんじゃないだろうか。 「どうしたの?食べないの?」 皆藤くんの言葉で我に返った。 ずっと皆藤くんを眺めていることに気が付いて、焦ってフォークとナイフを握った。 「食べる食べる!いただきまーす」 パンケーキを口に入れると、口の中いっぱいに広がる甘い香りと柔らかい触感。 はちみつの甘さが脳にまで広がる。 「おいひー」 幸せ。 甘い物って何でこんなに人を幸せにするんだろうか。 「ほんと、おいしそうに食べるね」 「そうかな?」 皆藤くんにそう言われると、なんだかちょっぴり恥ずかしい。 「こっちも食べる?」 「うん!」 私もシェアにちょっと憧れてたから、嬉しいな。 2つの味を堂々と楽しめるなんて、本当に贅沢。 お皿を交換しようと思って持ち上げて前を見ると、皆藤くんはパンケーキを刺したフォークを私に近づけてきた。 「はい」 「はいって、え?」 「ほら、あーん」 皆藤くんの運んでくるパンケーキはもうすぐそこまで来ている。 その甘い香りの誘惑に負け、思わず口を開いてパクっと食べてしまった。 あ。 あれこれ考える前に私の脳を制するのは、 「おいしー」 この一言。 「幸せそう」 「だっておいしいんだもん」 ベリーの酸味がより一層甘さを際立たせる。 甘い物食べてる時って本当に幸せ。 「俺もはちみつ食べたいな」 と、皆藤くんは少し上目遣いをした。 その顔はズルいよ、皆藤くん。 「私ばっかりごめんね!食べて食べて!」 一度降ろしたお皿を持って皆藤くんの前に差し出すも、一向にもらってくれない。 あれ、食べたいんじゃないの? 「新奈は食べさせてくれないの?」 「へ?」 あ、え?私もあーんってした方がいいのかな…? 結局貰ってくれないお皿を、元あった場所に戻して、パンケーキをゆっくり一口サイズに切る。 フォークで刺して、皆藤くんの口にまで運んでみると、皆藤くんは満足そうに笑って、パンケーキを食べた。 「やば、うまい」 「でしょ!?」 「もう一口ちょうだい?」 …。 皆藤くんって極上に甘え上手だ。 きっと詐欺師になれる。 このテンションで「お金貸して?」って言われたら絶対貸しちゃう。 それほどまでに、皆藤くんの言葉には強制力があった。 勝手に動く手。 もう一回パンケーキを口に運ぶと、嬉しそうに頬張る皆藤くん。 かわいい。 なんだこれ。 カップルがしてるデートってこんな感じなのかな。 相手がクラスメイトでもこんなに楽しいんだから、好きな人とだったらきっともっと楽しいんだろうな。 「なんか、本当にデートみたい」 思わず心の声が漏れてしまう。 それに反応するかのように皆藤くんは言った。 「本当のデートだよ」 …って、違うじゃん。 でも皆藤くんの言動は、勘違いをしそうな程にとても甘いものだった。
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