夏休みが明けて

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夏休みが明けて

「…何だか機嫌が悪いね、パトリック。」 そう言って伺う様に僕を見つめるバートは、最近グンと背を伸ばした。僕は夏休み明け、ひと月ぶりに会った親友の、僕との差のつけ方が気に入らなくてついつい睨んでしまう。 「バートが急に背が大きくなったからね!また随分差をつけてくれちゃってさ。」 バートが困った様に僕を見つめるのが、またイラつくんだ。僕がバートにムカつくのはお門違いだって事は自分でもよく分かってる。親を見れば一目瞭然、僕たちはこれからもどんどん差をつけられるんだろう。 思えば出会った頃から僕たちは違っていた。でもバートは身体は大きくても、優しくておっとりした性格だった。そのせいで、学校では大きいから直ぐに目をつけられて、でも反撃しないから虐められることが多かったんだ。 そんな時に僕が助けに入るのが、まぁ恒例と言えばそうだった。僕は要領が良くて、自分で言うのもアレだけど、頭の回転が早くて口が悪かったから、あの手この手でバートに絡む悪ガキたちを追っ払っていたんだ。 それなのに僕の目の前に立ち塞がるバートは僕より20cmも背が高い。成長期なのか?僕だってこの夏休みにお祖父様の家から戻ってきた時に、父様の仕事の都合で王都へ引っ越した両親から、背が随分伸びたねって言ってもらった筈なんだ。 なのに…。僕は背筋を伸ばしてバートを睨み上げると言った。 「いいよ、別に。獣人は体格だけじゃないからね。僕だって田舎でのんびりしてた訳じゃないよ。兄様や、従兄弟たちと切磋琢磨してたんだ。」 すると、バートが急に目を輝かして言った。 「え?もしかしてアーサー マジェスタかい?あの、ボウで有名な?」 僕はバートにニヤリと笑って言った。 「まぁね。あのアーサー マジェスタだよ。兄様も仕事の依頼でたまたまヨーデルに来ていたのさ。だから僕も兄弟のよしみで色々アドバイスしてもらったんだ。今度の試験は結構良いところまでいく気がするよ。」 バートは僕の頭を撫でるとにっこり笑って言った。 「良かったね。俺もパトリックがボウやってるの見るの凄い好きだから、楽しみだよ。」 僕は大きな手で頭を撫でられてちょっとぼんやりしてしまったけれど、一瞬遅れてバートを睨んで頭の上の手を振り払った。 「ねぇっ!頭撫でるのやめてって言っただろ⁉︎」 すると済まなそうな顔をしたバートが、少し伏せた丸い耳を掻きながら呟いた。 「…ごめん。何か習慣で。」 僕がぷりぷり怒っていると、声を掛けてきた男がいた。 「よう、可愛い子ちゃん。元気だったか?」 僕はしつこい野郎だとうんざりした気持ちで、心持ち顎を突き出してそいつを見た。
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