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僕のボウ
訓練所でボウを放つのは、故郷のヨーデルでやる時より競技という感じがする。ま、競技そのものに違いないんだけど。でも本来のボウは、足場の悪い野外で動く標的を狙って放つワイルドなものだ。
あのゾクゾクする様な興奮は此処には無い。僕は目をすがめるとキリキリと限界まで引き絞ったボウを、瞬時に解放した。空気を切り裂いて唸る矢が、弧を描いて的の中心の少し右に刺さった。
「パトリック、いい線いってるな!夏休み特訓したのか?腕が上がってるぞ。」
そう言いながら笑って声を掛けてきたのは、先輩のイアンだ。僕はジト目でイアン先輩を見つめると気持ち冷たい声で言った。
「…どうも。てか、イアン先輩もまた背が大きくなったんですね。…まったくどいつもこいつも。」
僕がぶつぶつ文句を言っていると、イアン先輩が僕の側に近寄って来た。
「何だ。機嫌悪いな。俺が何だって?」
すると後ろから笑いながら、ギャビンが僕の肩に手を回して来て言った。
「イアン先輩、こいつ夏休み中に背が大きくなった奴が許せないんですよ。そんなの個人差だからしょうがないんだけどねぇ。パトリックだって、たぶん成長…したんだろ?」
そう言ってギャビンはニヤニヤして僕を上から下まで見つめた。
僕はギャビンを押し退けると、顔を背けて言った。
「もちろん、僕もかなり背が伸びたよ。…でも周囲の方が大きくなり過ぎて全然大きくなった気がしないんだ!」
イアン先輩が笑いを堪えて側に近寄って、僕の頬をつねると言った。
「悪かったなぁ、パトリック。でも種族が違うんだからしょうがないだろ?」
僕は歯を剥き出して唸った。
「そんな事は重々分かってますよ!僕の心が狭いだけです!…そうやって僕の頬をいじくり回すのやめてもらっていいですか?まったく。子供じゃ無いんだから…。
それにその尻尾を僕に巻き付けるのも、やめて貰って良いですか?ほんと行儀の悪い尻尾だなぁ。」
僕が渋い顔でそう言うと、イアン先輩もギャビンも面白そうに笑うばかりだった。僕は肩をすくめてもう一度的の前に立った。僕が得意なのは連続して射かける技だ。
僕の矢の威力は、黒豹のイアン先輩ほどは無い。けれど、正確性においては訓練所一番だって評判なんだ。僕はゆっくり深呼吸すると周囲の音が消えるほど集中力をグッと上げて、次々に矢を放った。
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