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何だか周囲が騒がしい
結局王妃にすっかり気に入られた僕は、王宮へ遊びに来て、鬼蜂の毒袋や怪鳥ギャロスの卵の欠片を得た時の話を、まだ幼い王子たちにも話してくれと頼まれてしまった。
確か12歳と10歳の王子たちは今回の晩餐会には出席していなかったけれど、冒険話が好きな年頃だろう。王子たちに話をするくらいなら、まぁ良いけどと顔に出ていたんだろう、アーサー兄上が僕の皿に肉の塊を載せながら言った。
「パトリック、王子といえども王族だぞ。あまり気に入られると面倒な事になるぞ?ハハハ。」
すっかり他人事だと思っているアーサー兄上をジト目で見つめながら、僕は肉に齧り付いた。
「アーサー兄上はそれこそ国中から注目されてますよね?どうやって、その注目をかわしているのですか?」
そう尋ねると、アーサー兄上は面白そうな表情で言った。
「困った時は遠征に出掛けるに限るさ。だけどパトリックはまだ訓練生で逃げ場がないな?」
するとそこに、あの狼族のジャックがやって来た。
「今度パトリックが休みの日に、一緒に軽い遠征に行かないか?ちょっと面白いネタがあるんだ。もし一緒に参加したかったら連絡してくれ。」
そう言って僕に連絡の出来るカードを渡してきた。僕は受け取りながら、首を傾げて尋ねた。
「ネタって何ですか?面白いもの?」
するとジャックはアーサーに視線を向けると、指を振って言った。
「兄君の前じゃちょっと言えないな。流石に彼とはライバル関係にあるのでね。でも決して後悔はさせないよ?」
そう言うと、笑いながら自分のチームのテーブルへ戻って行った。隣に居たバートとギャビンが驚いた表情で、僕の手の中のカードを見つめた。ジャックが渡してきたのは、いつでも連絡が取れる特殊な魔法陣の使われたカードだったからだ。
アーサー兄上は、クスクス笑って僕にウインクして言った。
「私の弟は、王族だけじゃなくて、腕の立つジャックからもターゲットにされたみたいだね。彼の実力は本物だ。ネタが気に入ったなら、参加して経験値を高めるのも悪い話じゃない。ジャックなら、パトリックを危険な目に遭わせないだろうしね?」
すると隣で顔を顰めたバートがアーサー兄上に言った。
「アーサー様、あまりパトリックをけしかけないで下さい。ただでさえ無茶するんですから。それにパトリックは、危険な目に遭うのではなくて、仲間を危険な目に遭わせるんです。パトリック、まさかジャック様に連絡しないだろう?」
僕がバートの小言に慌てていると、アーサー兄上は僕に耳打ちした。
「なるほど。パトリックの首輪の綱は彼が握っているのかい?」
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