221人が本棚に入れています
本棚に追加
本能って怖いな 【完】
僕はまだ薄暗い中、バートの腕の中で目を覚ました。昨日すっかりバートに煽られて僕までタガを外してしまった。もしかしたら僕歩けないんじゃないの?
別れ際のギャビンの手加減してやれと言う言葉が、今になってこの事だったのかと身に染みた。バートはすっかり虎族の本性丸出しで、僕と言う獲物を狩りにくる。
大事にされてるのか、虐げられているのかのギリギリのところまで僕を追い詰めてくるんだ。でも僕も嫌いじゃないのが、我ながらびっくりするけど。
これもすっかりバートに絆されちゃったって事なのかな。まぁ、小さい頃から、会えば僕の側から離れなかったバートだから、僕も突き離せないし、まぁ好きだから。
僕は温かな良い匂いの腕の中で、僕の脚の間に絡みつく太い尻尾を感じて甘い気持ちになった。僕たちの尻尾は執着の気持ちが一番出るんだ。そう思えばバートの尻尾は、気づけば僕に絡みついていたっけ。
僕はそんなバートの尻尾を邪魔に思う時も有れば、心強く思う時もあった。僕が馬鹿みたいに自分のしたい事をやって来たのも、あの尻尾が側にあったからかもしれないな。
「…なんだ。もう起きたのか。もうちょっと寝てろ。」
掠れ声のバートに後ろからそう耳元で声を掛けられて、僕はクスッと笑った。
「何だか眠れなくって。やっぱり僕、ジャック様のネタの遠征に一緒に行こうかな。きっと凄い獲物をゲット出来る気がするんだ。」
するとバートは、さっきよりしっかりした声で言った。
「行かせないって。ジャック様はパトリックの事狙ってるんだぞ?」
僕は腕の中でクルリと回転して、バートの顔を見上げて言った。
「もちろんバートも一緒だよ?着いてくるでしょ?」
バートは眉を顰めて、少し嫌そうな顔で黙りこくって僕を見つめた。
「…何だかテディの警告が頭の中で鳴り響いてるんだ。パトリックと一緒だと命懸けだって。しかもジャック様の提供するネタじゃ、ますますそうなりそうだろ?だからって着いて行かない選択は無いだろうし。はぁ。分かったよ。俺これからずっとこんな感じだろうなぁ。」
僕はバートの甘い匂いのする首筋に顔を埋めて、息を吸い込みながら尋ねた。
「うにゃ…。こんな感じって?」
バートは僕の背中をゆっくりと焦らす様に撫で下ろしながら、困った様な、嬉しさの滲む声で言った。
「ああ、こんな可愛くて本能丸出しのパトリックに一生振り回されながら、命懸けのダンジョンに連れて行かれるんだろうって事さ。」
僕はのっそりと起き上がって、バートの上に覆いかぶさりながらうっそりと微笑んで言った。
「それって随分楽しそうな話だよね。しかもたっぷり僕からのご褒美付きだと思うよ。…バートは嫌なの?」
バートは僕の唇に指を伸ばしてそっとなぞると、甘く囁いた。
「ご褒美たっぷりなら、俺の命はパトリックに預けるさ。」
~完~
***後書き****
84話8万7千字ほどの中編にて完結になりました。後半のゆっくり更新でも、辛抱強くお付き合い下さいまして本当にありがとうございました。
ダンジョン攻略などを発作的に書きたくなって始めたこの作品ですが、色々なアイテムや獲物などを考えて書くのが楽しかったです。パトリックの無茶な冒険は書いていてワクワクしましたし、まぁ相変わらずのあらすじ無しで書いていたので、話の展開はキャラ濃いめのパトリック頼みに我ながらハラハラしました。笑
楽しんで頂けたのなら嬉しいです♡
この手のものは永遠に書いていけそうな感じですけど、取り敢えずキリの良さそうなところで完結にしました。今後は作中に出てきたキャラクターの1話完結などを書いても楽しいかもしれません。
耳と尻尾のある彼らは何とも魅力的なモフモフですからネ!(*≧∀≦*)キャーモフモフスキー♡
コプラ
最初のコメントを投稿しよう!