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そうして、今回もガムの塊が練り上がった。ちぎって口に運び、噛む。噛み続ける。
グルテの胃がじわじわと温かくなってきた。その熱は温度を上げていき、みるみる全身に広がっていく。そして――これは何度も経験した者にしかわからないが――骨と皮膚が弾力を増したのを感じる。
いける、とグルテは思った。大きく息を吸い込むと、痩せぎすの胴体が瞬く間に丸く膨れ、宙に浮いた。自分の重さは、ほぼ感じない。
「……うわ」
グルテは爛々と目を輝かせた。低い天井にはすぐに到達してしまったが、手で軽く押せばふわんとはね返り、降下したと思えばまた上っていく。
しばらく空間を漂っていたグルテだが、積まれた石板の尖った角に背中をぶつけた。痛みが走る。同時に、グルテの身体はどんどん元の重さを取り戻し、派手な音を立てて地面に落ちた。積まれた石板は崩れ、横にあった紙の塔をもなぎ倒す。
「痛っ! ……うわ、できた……できた。できた、できたぞ、できたっ……!」
石に刺さった背中も地面に打った足も痛くてどちらをさすったものか、グルテは涙目になったが、にやけも止められない。グルテのこんな表情は、親すら見たことがなかっただろう。
十五年かけた研究が、遂に完成したのだ。
「……ライモン。やっと……」
これで、幼い頃の約束が叶う――ための、一歩がようやく進んだ。
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