AGE 10~25

1/3
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ

AGE 10~25

◆    初めて会ったとき、肌の色が薄くて黒い髪の男を綺麗だと思った。はっきりした顔ばかり見ていたサトイにとって、サカグチの主張しない顔は珍しいことも含めて、綺麗だと思った。その人と、父親が組んで仕事をすると知ったとき、なんだか嬉しいと思ったのだ。  サトイの父親は発掘師だった。元々は牧場で働いていたが、やめて発掘師になった。こつこつ貯めた金で小さな船を買った日のことはよく覚えている。海には昔から何度も遊びにいっていたし、海は好きだ。小さな船に二人で乗って、沖まででた海の青さは忘れられない。人間の生活を飲み込む恐怖の対象だけれど、それでも海は美しい。 「でも、潜ると怖さがわかるぞ」  沈んだ街は、生活で人生だ、海は墓場で、そこから遺物を拾い上げる行為は、人生の救出なんだと父は言った。だから発掘をずっと続けたいんだと。  専属発掘師の条件として、サカグチは近くに住むことを提示してきたから「上」の街中に引っ越した。父親のいない一週間はサカグチが雇ったヘルパーが来てくれた。  父はサカグチと組んでから少し疲れた顔をしていたけれど、楽しそうだった。サカグチと発掘に行ってしまうと一週間は帰ってこなくて寂しいけれど、帰ってきたら二週間家にいてくれるし、サカグチもしょっちゅう遊びにきてくれるし、その二週間はいいことしかない。  そんな暮らしを三年、楽しかったと思う。ただ、父親は年々、疲れた顔になった。そして、サカグチは来なくなった。  体を壊して発掘師を辞めたと聞いたのはしばらくしてからだった。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!