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サカグチを憎んでいたころが懐かしい。そのままでいられれば、こんなに苦しまなくてすんだのだろうか。
サカグチから「トモ君がすぐにすり寄ってきて困る」なんて相談と言う名のノロケを聞かされたり、目の前で見つめあって笑う二人を馬鹿みたいに見てるなんて滑稽をしなくてすんだのに。こうなる前に諦められたらよかった。十年前、一度きりだと、寝なければよかったのか。
「え? サローシステムって、サカグチさんが開発したの?」
「正しくは、父の研究を継いだだけですが」
「でも、今現在メンテやアップデートで手をかけてるのはお前だ。なんだ子犬、そんなことも知らなかったのか?」
「うっ、うっせーな!」
こんなことでマウントとっても仕方ないけれど、トモが悔しそうな顔をするのを見て少しは溜飲が下がった。
次に会ったとき、明らかにサカグチの様子が変わっていて、ああ、二人は寝たんだと知る。
手に入らない。どうしても、どうしても。
でも、サカグチが前を向いて笑うのは嬉しい。
どうにもならない感情で、食事が喉を通らなくなった。
苦しいとき、連絡する先は、決まっている。
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