AGE 50

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AGE 50

  父の夢を奪った男が憎かった。でも、その人は誰より優しくて、綺麗だった。 ◆  予感はあった。  初めてトモを見たときから、サカグチを解放するのはこいつかもしれない、と。サトイがいないうちにサカグチが口説き落としたというだけで、サカグチの執着が見える サカグチが嬉しそうに持ってくる発掘品を修復しながら、おそろしく品質がいいのはすぐ分かった。海の中にいてなお、トモには良いものが見えているのだろう。そんなこと、常人にはできやしない。サトイも同じ海に潜っていたからわかる。あれは、選ばれたものだ。サカグチが何度もうかれたように言う「天才」は本当なのだ。  五年前、サトイを恐れて出ていった若造などとは、目が違う。本気でサカグチの為に潜る決意をした目だ。だから、余計に気に入らないと思った。掻っ攫われる、という予感は確かにあったのだ。 だから、研究所で鍵を見つけるのはトモだと思った。トモが無理なら、誰でも無理だろう。    そして「見つけた」トモがサカグチの「特別」になるのは必然だった。それはサトイ自身の祈りでもあったのだ。  どうか、サカグチがアタッシュケースから解放されますように。  願わくは、解放するのは自分でありたかったけれど。
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