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「僕お菓子買ってくる~」
「明も行くのかよ」
「すぐ戻ってくるから勉強やってて」
「分かった!」
部屋を出たらまずは一階のスーパーに向かった。
飲物のコーナーを見ても誰もいない。他のコーナーも探したが見つからなかった。
続けて自動販売機にも探しに来たが姿が見当たらない。
周辺に飲み物を買える場所は他にないのに。
慌てて電話をかけた。その電話さえワンコールもしないうちに切られる。
すぐ後メッセージが来た。画面には『ごめん』という一言だけが書かれてあった。
どこにいるのか聞いても返事は返ってこない。
ここにいないのだとしたら校舎の方にいるのかな。見ているか分からないけど、そっちに行くとだけ携帯に送っておく。
確かではないけどなんとなくあっちの方にいる気がする。
校舎の中に入れば人の気配が増えた。
企画書には一通り目を通しておいたから知ってる。
見つからないようにはしているものの数が多すぎて校舎に来るまでに何回か追いかけられたが、なんとか撒いた。
「いたぞ!」
くそっ、また見つかった。
近くの階段を上って二階に上がると晴の気配が一層強く感じて、一つの部屋に入った。
「晴!」
呼びかけても返事は返ってこない。
わずかに一人分気配があるのにこれは晴のものじゃないのか。
「ハアハア、ハア......ここにいると思ったんだけど...」
久しぶりにこんなに走ったせいで息が全然整わない。
「急にいなくなるなんて......」
今までこんなことは一度もなかった。
何をするにしても一緒だったし、離れたことなんてない。
部屋を出たとき一人で行くって言ったのはやっぱり僕から離れようとしていたからだ。
一体いつから晴は僕から離れようとしていた?
僕が嫌になった?
晴までも僕を突き放すのか?
もう一度、今度は別のところを探しに行こう。
きっと僕を待ってくれているはず。
今行くよ。
静かにドアを開けて廊下に誰もいないか確認してから部屋を出た。
すぐ後鬼ごっこの終わりの合図が鳴り結局晴を見つけることはできなかった。
寮に戻ると友ちゃんたちがいる会長の部屋じゃなくて晴の部屋に来た。
ずっと晴のところにいるから僕の部屋は一度も使っていない。
それでも三週間ぶりに来たこの部屋は夏なのに冷たい空気が漂っているような気がした。
ベッドに寝転がっているとポケットに入れていた携帯からメッセージが届いたことを知らせる着信が鳴る。
『早く戻ってこいよ!』
友ちゃんからだ。
いつもなら1通来ただけで喜ぶのに今はそんなテンションになれない。
『ごめんね、今日は自分の部屋にいるから。勉強頑張って』
僕らしくもない。
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