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「俺がやります。蓮は座って待ってて」
机のある方に無理矢理背中を押して連れていく。
途中までくると諦めてくれたようですんなりと席に着いた。
「苦手なものとかありますか?」
「僕はなんでも食べるよ」
料理は人並みだけど材料もそんなにないしあるのは大体野菜だから野菜炒めでもいいかな。調味料はまだいっぱいある。
本当は買い出しに行きたいけど誰かと会うのが怖くて何も買えずにいる。
食料がつきたら終わりだなとか考えてた。
一階のスーパーでは食材も調味料もほとんど高級ないいものを揃えている。材料くらい安くても美味しいのに。
お肉はないから本当の野菜を炒めた野菜炒めになってしまった。
「できました」
「料理できたんだね」
「これくらいできます!バカにしないでください」
ごめんごめん、と謝りながら食べてくれた。
「美味しいよ」
「ありがとうございます」
たまに会長たちにもご飯を作ってあげたりしてたなと、ふと思い出した。
無意識に涙が溢れだした。
「どうかした?」
蓮が俺の隣まで来る。
「すみ...ませ...。思い出すと.....なんか寂しいなって」
「どうして?」
前まで泣いたりすることなんてなかったのにな。
気づいてなかっただけでずっと毎日が充実していたのに今じゃあ他のみんなはいないしあんな目に遭ってしばらくずっと一人だったから。
涙もろくなってしまったのはきっとあの時助けて欲しかったのに助けてもらえなかったとき、涙がでてしまったあのときに俺という存在を作り上げていた心の壁が一部砕けてしまったのだろう。
そこに蓮がきて俺に優しくしてくれるから砕けたところからヒビが広がった。ただそれだけのこと。
「蓮が優しくしてくれるから...俺、蓮のこと怖がったのに......」
「気にしないで。右京君とはずっと仲良くなりたいと思ってたんだよ。でもね生徒会と風紀の仲が悪いせいで僕からは生徒会に近づけなかったんだ。その方がいいってこともあるからね」
蓮は俺の頭を肩に寄せる。
俺も体の力をぬいてそのまま蓮にもたれかかった。
「右京君が後悔していたとしても僕はこれでよかったと思うよ。彼らはもう少し自分達の立場に自覚を持つべきだった。それがちゃんと分かってる君は偉い。もし生徒会が敵だとしても今度は風紀が味方だから。助けて欲しかったら僕でも仁にでも直接助けてって言ってごらん。必ず君を助けるからね」
「あり.....がとう、ございます」
蓮の言葉は暖かくて止めようとした涙は止まらず頬を流れ続けた。
それを止める術を知らずただ蓮の肩で泣いていた。
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