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「だから言ってごらん。右京君が僕にして欲しいこと」
「......頭...撫でて欲しい」
落ち着くから。
他の人に触られたら怖くて震えてしまうけど、蓮なら大丈夫。嫌がらずに待ってくれたから。
蓮になら触られても平気。
「仕事のことだったんだけどね......でも君がそれを望むなら」
肩にもたれかかる頭をそっと自分の膝の上に移す。
風紀委員室のときと同じ膝枕。
今度は逃げたりしない。
「今日はもう仕事は終わりにしよう」
「まだ終わってない......」
上にある蓮の顔を見上げればにこっと笑顔で返される。
「右京君が頑張ったから急ぐ必要のない仕事ばかりだよ」
「......」
「大丈夫。僕がいるからゆっくり寝ても何も悪いことなんて起きない」
目を瞑るとあの男が出てきそうで怖かった。
だから仕事をしていたかったのに蓮にはその気持ちが伝わってしまった。
「風紀委員室で寝てしまったときに蓮が助けてくれました」
「夢で?」
「はい......助けを呼んでも誰も来てくれなかったのに...今日初めて助けられたんです。その時は誰か分からなかったけど間違いなくこの蓮の手と同じでした」
蓮は複雑そうな顔をした。
ここでそんな反応が返ってくるとは思わなかったから続けていいのかわからず黙ってしまう。
「ごめんね。実はあの時君を休ませようと思ってお茶の中に睡眠薬を入れたんだ。あまり寝れていないようだったから。でもそのあと眠っている君が辛そうにしていて後悔したんだ」
睡眠薬を盛られたということよりも蓮が辛そうな顔をしていることに耐えられなかった。
すべては俺が招いてしまったことだ。
転校生が親衛隊から制裁を受けたのも俺がそれに巻き込まれたのも、そのせいで蓮がこんなにも苦しそうなのも。
自分勝手な俺が原因だ。
頭を撫でてくれる蓮の手をぎゅっと握った。
「蓮は後悔しないで。蓮のおかげでいい夢が見れました。一緒にいたらもう怖くないです」
できる限りの笑顔を蓮に向けた。
また助けてくれる気がするから。
「ありがとう。今日はずっと一緒にいるから安心して寝ていいよ」
「はい」
「このまま寝る?」
「いいんですか?」
撫でられると気持ちよくて眠たくなってきた。
でも片付けとかしないといけないし、まだご飯食べてない。
「あとは僕がしておくから先輩に任せておいて」
「はい、ありがとう...ございます」
段々と目蓋が下がってくる。
寝たくないと思っていたはずなのに気づけば眠たいという気持ちに任せて目を閉じた。
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