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敵がすごいリアルで攻撃を防いだり血飛沫とか本物みたいで迫力があった。
メインキャラの女性がアクロバティックでカッコよくてあんな動きができたらいいよな。
この筋肉じゃ出来るわけがないと自分の細い腕を見ながら思う。
「孝太はどうだったんだ?」
「僕は作品ごとに主人公のタイプが全く違うんですけど、どれも自分が生き抜くこともそうですが余裕のない中で誰も見捨てようとしない、そんなところが好きなんです!」
「ふ~ん...孝太は友達を大事にしてそうだよな」
「なっ、右京様にそのようなことを言って貰えるなんて......みんなに自慢します!」
「ほどほどにしてくれ」
良くも悪くも真っ直ぐで正直なところは孝太の良い点だ。
伊織も見習ってほしい。悪い意味では孝太と一緒なんだけどな。自分の本音を俺に直接ぶつけてくるところとか。
「もういい時間だしかえ...___っ!」
正面の壁に飾られている時計を見ていたら、どこからか視線を感じて後ろを振り返ったがその視線は一瞬でなくなった。
見られるというのはいつものことだけど、それは気にするほどのものではない。だがさっきのは違う。ただ見ているだけというよりは何か俺にとってよくない感情のこもった視線。
思い出すだけで体が震えそうになる。
周りを見ても見知った人はいない。ここは人が多すぎて見つけにくい。
「どうかしたんですか?」
「いや...何でもない。帰ろう」
「あっ、はい!」
バスに揺られながら学園へと戻っていく。
停留所は門のすぐ近くで何気ない会話をしながら寮までの道のりを歩いた。
「ここまでだな。今日は楽しかった。ありがとう」
「いえいえっ、僕のほうが楽しませていただきました。珍しい右京様のお姿が見られてよかったです」
「誰にも言わないでくれよ?」
「もちろんです!墓場まで持っていきますっ!」
「卒業するまででいい。じゃあな」
良い子過ぎるのも考えものだな。
いい笑顔で言うものだからこいつには優しくしたくなる。強く言えない。
おかしな事を言ったものなら何でも賛同して行動しそう。
孝太と別れ寮のエレベーターに乗り最上階まで上がる。
今日は楽しかった。新しいことも知れたし。俺は所謂箱入りだから知っているのは家と学園だけ。外の常識はほとんど知らない。
また誰かと一緒に行けたらいいな。
そんな呑気なことを考え仕事と蓮が待つ部屋へと戻った。
このときにはすでにあの視線のことを忘れていた。
忘れたことを後悔するのはまだ先の事だ。
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