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僕はどうしたらいいんだろう。
晴がいないとやる気も起きないし何にも出来ないよ。
今なら連絡しても出てくれるかな。
そう期待して電話をかけてみた。
「......晴」
『泣きそうになってどうしたのさ』
「どこにいるの?」
『さあ、どこだろうね』
やっぱり僕を突き放すような言い方。
そんなことあの時に分かっていたじゃないか。
今は晴と会うことが優先だ。
「ちゃんと教えてよ」
『......ごめん。しばらくそっちには行かない』
聞きたかったのはそんな言葉じゃない。
「何で?僕が嫌いだから?」
『明のことは好きだよ......でも僕にはしないといけないことがある。今の明には分からないことかもしれないけど我慢して』
僕には分からないって......何もかも一緒なのに、晴と違いなんてないのに。
そのまま僕を捨てる気なんだ、あいつらと同じように!
「晴だって結局僕を捨てるんだろ!」
『落ち着いて、きっと今だけだから』
詳しいことはなにも教えてくれない。
今だけ?この先ずっとの間違えだろ。
いずれ晴もこうなるって分かってたけど、双子だから特別なんだって思ってた。
いつも僕のことを考えてくれるし理解してくれるから、僕の存在を無いもののように扱った両親とは違うと思ってたんだ。
両親は僕らが生まれてすぐ僕を見放した。
双子に生まれたのにもかかわらず子供は一人で十分だと言い、最低限のものしか与えてくれなかった。僕を育ててくれたのは家の使用人たち。それは晴も変わらないが違うのは親からの愛情があるかないか。
でも僕は親からの関心がなかった分まだいい方だ。僕たちは運動はできるけど勉強は出来なかったからせっかく育てた子供が期待外れだと知って、そこから両親からの厳しい教育が始まった。
晴は暴力を振るわれたりしてアザが絶えなかった。そんな姿を見ると嫉妬なんてできるわけなかったし、むしろ傷の心配していた。僕が晴を助けるうちに晴に向いてた怒りが僕にも向いてお互いを助け合うことで毎日を乗り切っていたところを親戚の人が気付いて僕たちを引き取り育ててくれた。
お互い思い合って生きて考え方や好みが同じだからこそ二人で一人、そう思ってたはずなのに結局僕は晴になれるわけでもないし、晴が僕になることはない。
「晴だけだったのに......」
『今は違うよ。明には友ちゃんだっているだろ?』
「晴だってそうじゃん。だから戻ってきて」
『僕の一番はいつだって明だけど、時には優先順位が変わることもある。過ちを犯したらそれを先に償わなければならない。僕はそれに気づいたから』
「それなら僕も一緒に」
どんな過ちを犯したのかは知らないけれど、そんな時こそ二人でどうにかするものじゃないのか?
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