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『言いたいことはわかるけど僕たち二人とも犯したんだ。明もいずれそれに気づいたとき彼のところに行くんだよ。きっとすぐにそのときが来るはず』
晴は確かなことをほとんど教えてくれない。
ここにいない理由もどうして来れないか、彼とはいったい誰のことを言っているのかも。
『それじゃあもう切るから』
「待って___」
これじゃあ僕はどうすれば......。
電話の向こうから音はしなくなった。
それからずっとこの部屋にいるけど晴は一度も戻ってきていない。
ベッドの上に放り出したままの携帯が着信を知らせる。
晴からかと思い誰からかも確認せずに通話ボタンを押した。
「何してるんだよ!」
『何、って勉強にきまってるだろ?なんで怒ってんだよ』
友ちゃんか。
嬉しいはずなのに何故か喜びは出てこない。忘れてしまったように寂しさを感じてしまう。
『なんでそんなに怒鳴るんだよっ』
「ごめんね、晴かと思って」
『喧嘩したのか?仲良くしないといけないだろ。俺が相談に乗ってやる!』
この言葉も聞いた瞬間いつもなら飛び出していきそうなのに耳を通り抜けていくようだ。
晴に裏切られたような気持ちでいっぱいになる。
どうしてこんなにも変わってしまったのか。友ちゃんは好きだけど晴がいなかったら僕は何も出来ない。
「ううん、大丈夫。僕一人で何とかするよ」
『晴と仲直りするのも大事だけど勉強もしろよ!』
「分かってるよ」
友ちゃんには冷たいって思われるかな。
ついこの間まで僕のことをどれくらい好きになってくれてるのか、それだけを考えていたのに今は晴のことだけがどうしても気になる。
電話を切ってもう一度晴を探しに行こうと支度をする。
校舎を走り回って教室をしらみ潰しに探した。だけど見つからなかった。
その日は諦めて疲れた体を休ませるために寝た。
* * *
そして二日経つも見つけられなかった。
友ちゃんに会う気にもなれないしメールを何通も送ってくれてたみたいだけど、晴からじゃないことに落ち込みたくないから携帯は見てない。多分充電もしてないから使えない。
今日は落ち込む気分を一変しようと外に出てみた。休日ということもあり校舎の中はとても静かだ。
無意識に足が1つの部屋へと向かった。
ドアの隙間から光が漏れていることに気付き覗いてみる。
だれもいない。
まさかこんなところいるわけないよな。生徒会室になんて......。
もう晴から連絡が来るのを待つしかないのかな。
部屋に戻って携帯に充電器をはめた。
ただ『その時』を待ちながら......。
(水瀬 明 side end)
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