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「英か」
「久しぶりだね。全然顔を会わせないから心配してたんだ」
爽やかな笑顔で嫌みを言う蓮がすごい。
「転校生一人に生徒会が現をぬかして僕の目がおかしくなりそうだ」
「城崎といい英といい風紀の奴はムカつく奴ばかりだな」
蓮の言ってることは何もおかしくない。
少し他の生徒と違うからってこうも好きになるものなのか甚だ疑問だ。ただ何も知らないだけだろ。
これ以上ここにいても時間の無駄だから蓮を連れていく。
「行きましょう」
「人のこと言えねえだろ。風紀に尻尾振って、一人じゃ仕事もできねぇのか」
一人でやらせてるのはのは誰だよ。
「分かってるなら仕事しろよ」
「ああ、いいぜ」
「うっ...」
あごを強くつかまれ会長の顔が近づく。
細められた目は睨むわけではなく、何て言えばいいのか......。怖い笑顔。
「俺のものになるならしてやる」
耳元でそう吐かれ反射で突き飛ばした。
気持ち悪いっ。
「___はぁ...ヒュ...はっ、はァ...」
呼吸が苦しくなるのを感じた。一瞬あいつと重なって見えて完全に思い出してしまった。
胸のあたりを押さえて必死で呼吸を整えようとする。
「右京?」
「真幌!」
苦しい中で何が起きているのか分からず困惑する会長と、慌てる蓮の俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
すると足が地面からはなれ体を抱き上げられる。すぐに蓮だと分かり縋り付くように首に手を回す。
「...蓮っ」
「一旦部屋に戻ろう」
部屋に入ろうとしたところで会長の呼び止める声が聞こえた気がしたけど、蓮は気にしない様子で止まることはなかった。
もしかしたら気のせいだったのかも。あの心配そうに呼び掛ける声は......。
寝室まで入るとベッドの上に寝かせてくれて、ずっと頭を優しく撫でてくれるからすぐに落ち着くことができた。
「大丈夫?」
「はい...」
また迷惑をかけてしまったなあ。俺の問題なのに。
少しの間息抜きで外に出ようと思っただけなのに、よりにもよって何でそんなときに遭遇するかなぁ。
生徒会の奴だけには知られたくなかった。特に会長は。
「ここで休憩しておくといいよ」
「ありがとうございます」
「気にしないで。こういう時のための僕だから」
そんなわけない。仕事を手伝ってもらうためだけに来てくれてるのに仕事を増やしてどうするんだ、俺は。
30分後、様子を見に来た蓮は俺を部屋から連れ出し散歩に付き合ってくれた。もうそんな気分ではなかったが仕事をする気にもなれなかったから丁度いい。
今は1日くらいなら仕事をしなくても大丈夫なくらい余裕ができた。これも蓮のお陰だ。本来なら自分の仕事でないないだろうに。
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