私の彼女

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 端的に申しまして、私は彼女が羨ましかったのです。  私たちは皆、同じような髪色で、同じように髪を結わえて、右も左も双子のようなものばかりであります。けれども、その中でとってもそれが似合う方がいらっしゃいました。ハナさんです。  彼女だけは、見慣れた黒髪も、制服も唯一無二に思えました。それに! 声も、鈴のように聞き心地良いものでした。彼女を例えるならば、鈴蘭やダリアでしょうか。二つの花はどちらも正反対に思えますが、その可憐な様子と我知らず目で追ってしまうことからお似合いでしょう。私にとって、彼女はまるで、物語のヒロインのようでした。  私がそう彼女に伝えれば、きっと「私は降板しましたわ」と諦観した言葉を私に返すのでしょう。  冒頭に申した通り、私は彼女のヒロインらしい存在感が、羨ましくて仕方ありませんでした。だからこそ、舞台から降ろさせたこの世が堪らなく憎いと思うわけです。
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