ひつじが一匹

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 むかしから、頭の良い人が好きだ。まさにちょうど目の前の美少年のように、イチを話してジュウを理解してくれるような人がいい。贅沢な私は「こんな私を分かってくれるひと」を永遠に探し求めている。出会った暁には親友になってほしいし条件が揃えば恋人、いや叶うなら家族になりたい。  私自身は他人を分かろうとする努力なんてしてこなかったくせに、相手にはそれを求めている。エゴの権化だな、まったく。 「まあ、わざわざ嫌われたくはないんだけどね。別に好かれたくもないけどさ」 「自分以外の何かをひどく嫌っているひとのそばって、確かに居心地よいですからねえ」  屈折したって、光は光。性善説過激派だし、私だけが悪役にはなりたくない。私よりもほんのちょっと悪くて、だけど生きるのが上手だから悪に染まったりなんかしない。それでいて不器用な私のことも正義の方向にしれっと引っ張ってくれる人。ねえ、どこかにいませんか? どう見えているか知らないけど、私だって陽の側に行きたい願望はあるからね。できれば無理せずにぬるっとそちら側に移動したい。 「道枝くんの嫌いなものは何?」 「あら、なんでしょう? 言われてみれば、僕、嫌いな物って無いかもしれませんね」 「Bの善人気取り!」 「正解」  やんわり酔いが回っている道枝くんは、持ち前の上品な語彙力の隙間に鋭利な槍をちらつかせる。切れ味の鋭い省エネモードになったダークな彼もこれはこれでなかなか乙である。ただし、美少年に限るけど。 「自分の好きなものを嫌いって言われるのはそんなに嫌じゃないよね」 「でも、逆に僕が嫌いなものを好きだって言ってる人は嫌かもです」
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