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だから、毎週末のフライデーナイト。こうしてお誘いメッセージを受信するのは距離感のバグが起きているとしか思えないのだ。道枝くんには注意が足りない。こんなにもかわいいのだから、いつか危ない目にあっても知らないよ。
私は理性があるほうなので毎週誘われるからといって「え? これワンチャンいける?」などと自惚れたりしないものの、みんながそう安全とは限らない。あと、間違っても天使に雄っぽさを感じたくないからよいものの。
こちらからメッセージを返信した。私が職場の人間で私用の連絡先を教えあっている人間はごく僅かだ。道枝くんの他には、同期の奴とか。
『誰かの所為で残業になったのですが、十九時にはあがります。いつもの居酒屋でいいですか?』
『かしこまりました! 僕、お腹ぺこぺこです! ご確認よろしくお願いします』
いったい何のご確認をよろしくお願いされたのか。分からないが、とりあえずこの返信からしても道枝青年の愛らしさが伝わると思う。可愛さを噛み締めたくて何度も読み返してしまった。
道枝くんから初めて金曜の夜に誘われたのは、彼がまだまだ新人だったときである。取引先の女性からしつこく誘われていることを領収書から察した私が大丈夫なのかとやんわり訊ねたことがきっかけであった。すると彼は困ったように眉を下げて笑い、「僕、女性が苦手なんです」と答えたのだ。これまであまり深く女性とは関わってこなかったようで、執拗に迫られた際の対処が器用にできないらしい。成人男性をここまでかわいいと思ったのはこの時が初めてだ。
今の彼ならもうひとりで平気だろうけど、当時はまだ新人だったため今後の仕事についても考えると冷たくあしらうこともできなかったようであった。
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