アマキツネ神隠譚

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 暖かな日差しと、心地よい風が吹く中、4人の少年少女が緩やかな山道を歩いていた。  先頭には少年が2人。その後ろを2人の少女が続く。  皆一様にリュックを背負い、トレッキングウエアといった出立ちだ。  先頭を歩く少年の名は、佐京光希(さきょうこうき)と言った。  やせ形のオーバル型メガネをかけた少年。  小ぶりで丸みのある形状のメガネをかけているためか、落ち着いた優しい印象がある。取り立ててカッコよくない目立たない男の子ではあったが、素朴で温かく、日差しを受けて香る土の匂いが伝わってくる。  そんな、少年だ。 「光希。次のチェックポイントだけど」  地図を手にした木村風樹(きむらかざき)が話しかけてくる。  身体は細い。  しかし、体格はしっかりとしていた。ルックスは悪くないが、どちらかと言うと一山いくらの、どこにでも居る少年であった。  光希は穏やかな笑みを浮かべながら答える。  そして、すぐに会話は終了した。  二人のやり取りを見つめていた安理紗子(あんりさこ)は、少しばかり眉根を寄せた。  肩のあたりで揺れる毛先が大人可愛いワンレンミディアムヘアの少女。  身長は高く、スタイルが良く顔も整っているため、美少女と言って差し支えなかった。  ただし、目つきが悪い。  つり上がった大きな瞳は、どこか攻撃的な雰囲気を放っている。 「みんな。ちょっとペース落とさない」  声をかけてきたのは小西真美(こにしまみ)だった。  彼女は、セミロングがよく似合う小柄な女の子だ。  小柄ではあるが胸は大きく、手足は長い。モデルのような体型をしている。  可愛らしい顔をしているのだが、表情はいつも気怠げだ。  その為に、疲労が余計に酷く感じられた。  真美の申し出に対して、光希はすぐに了承の意を示したが、理紗子は反論する。 「何言ってるのよ。佐京、あんたビリになりたいの」  不満そうな表情を隠す事なく向けると、理紗子は不機嫌そうに言葉を返す。  どうやら、火がついたようである。
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