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File.1 放送室のうわさ
「放送室の噂聞いた?」
「放課後に居残りをすると、スピーカーから呪いの声が聞こえるって話?」
「なんだ知ってたの」
太田有希はクラスメイトの声があからさまにトーンダウンしたので、思わず吹き出した。
「制服を着た霊が放送してるんだって。帰れ~帰れ~って恨めしそうな声で。実際3組の男子が部活で居残りした時に聞いたとか」
やだ怖ーい、と適当に話を流しつつ太田は靴箱から、登下校用ローファーを無造作に床へ放り出す。
生徒用昇降口は6時間目を終えて帰る生徒達でごった返していた。
天井のスピーカーから音割れ気味に、ドヴォルザークの家路が流れる。
――下校の時間になりました。残っている生徒はすみやかに下校してください。
もちろん今放送しているのは、放送部員の誰かだろう。
ハキハキと聞き取りやすい、放送に慣れた女子の声だった。
「じゃ、また明日ね」
ひらひらと右手を振りながら、クラスメイトは自転車置き場の方へ歩き去る。
今日は親が車で迎えに来るので、別々に帰ることにしたのだ。
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